◆女子プロゴルフツアー 樋口久子・三菱電機レディス 最終日(30日、埼玉・武蔵丘GC=6650ヤード、パー72)
“元祖ギャルファー”金田久美子(33)=スタンレー電気=が4バーディー、4ボギーの72、通算9アンダーで逃げ切って、2011年フジサンケイレディス以来、11年189日ぶりの2勝目。88年以降でツアー最長となるブランクVに涙した。かつて「天才少女」と呼ばれたが、けがや不調によるシード落ち、SNSで批判を受けるなど苦闘を乗り越え、執念で頂点をつかんだ。川崎春花(19)=村田製作所=が2打差2位。
短いウィニングパットを決めたキンクミは、直後に感極まった。関係者からウォーターシャワーで祝福され、またも涙があふれた。「すごく長くて。まさかこんなところで勝てるとは」。19歳・川崎に1差に迫られた17番で1メートルにつけるバーディーを奪い、勝負あり。大会の冠名でもある樋口久子氏も復活劇に涙した。
当時のツアー最年少の11歳11か月で2001年7月のゴルフ5レディスに出場。中3の04年には同大会で3位に入った。21歳で初優勝してから苦節11年。ベテランの域に達した“ギャルファー”は「QT(予選会)行かなくていいのが一番うれしい」と笑った。11年189日ぶりVはツアー制後最長のブランク優勝だ。
「今思い出しても涙が出る」。絶不調だった5、6年前。ドライバーで140ヤードのチーピン(左に曲がる球)しか出ない。グリーンに乗らず、得意のパットも50センチが入らない。「こんな恥ずかしいゴルフならやってもしょうがない。辞めようというより、辞めたいと思ったことが多く、優勝争いなんてもうできない」。当時はゴルフ場に来るだけで涙して、吐いたといい、じんましんも出た。
SNS上での批判にも苦しんだ。「こんな見た目だから、練習していないのではとよく言われる」。食事の写真や私服姿の投稿に心ない書き込みが寄せられ、「みんな思ってるほどメンタルも強くない」とショックを受けた。だが、「絶対勝って見返してやりたかった」と胸を張った。仲間の支えに助けられた。熱狂的なファンはもちろん、初Vの11年から同行する渡部彰マネジャー(41)には「私以上に信じてくれた」と感謝した。
近年は腰痛や足首の負傷もあり、フルショットができずハーフショットを覚えた。「プロになった頃(09年)は賞金女王にもなりたいと思っていたが、現実は甘くなかった」。それでも「負けず嫌い」だから続けられた。33歳になった“元天才少女”は「諦めなければ結果はついてくる。3勝目目指して、若い子に負けないように」と実感を込めた。(岩原 正幸)