◆報知新聞社主催 国内男子プロゴルフツアー 今季最終戦メジャー 日本シリーズJTカップ 第2日(2日、東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)
10月の日本オープンで95年ぶりのアマチュア優勝直後、プロ入りした蝉川にはメジャー2連勝が懸かっている。注目の第2ラウンド、1番で5メートルを沈めるバーディー、6番パー5、8番パー3とボギーなしの3バーディー。一気に優勝争いに加わり、ギャラリーは色めき立った。だが直後の9番。向かい風の中、148ヤードの2打目を9アイアンで1メートルにつけながらバーディーを取れず。さらに11番で3パットのボギー。好スタートの芽を自ら摘んだ。
ラウンド後、9番のプレーにこだわった。「大事なパットだったのに。思ったより、曲がった」と唇をかんだ。日本オープンは1日も首位を明け渡すことなく堂々と勝った21歳には“許せないミス”だった。「もっと飛ばし、もっともっとうまくなります」。弱気を吹き飛ばすように言った。
人生は照る日、曇る日。ミスにおびえ不運をかこつゴルフは思うに任せないことが多い。だが、ここは尊敬するタイガーがやってのけたウソのような本当の話を紹介だ。1996年8月、スタンフォード大を21歳で中退。プロ入りしたタイガー・ウッズ(米国)はシーズン末の2か月の米ツアーで8戦して2勝、3位2回。そして翌97年開幕戦で勝ち、4月のマスターズでメジャー初優勝。その年は4勝して賞金王に。その後の活躍は誰もが知る通りだ。
W杯サッカーでスペインを破り、日本が世界の16強入り。蝉川は「興奮した。僕も努力してじっくりパワーを積み重ねたい」と力を込めたこの日、石川遼がこんな関連談話をホールアウト後に語った。「ゴルフは自己コントロールが勝負。自分の実力がないと通用しない。その点は団体戦のサッカーとは違う。そのわかりやすいところが僕のやりがい」―含蓄のある言葉であると思う。今の蝉川に贈りたい。勝負どころが来ている。歴史を残せ。タイガーに続け。(ゴルフジャーナリスト・武藤一彦)