88歳、田中さんのエージシュートは2023年4月13日現在、1181回を数えた。71歳で初エージシュート達成以来、ひたすら励んで18年、この3月3日の誕生日で88歳、米寿を迎えてますます元気である。年齢と同じか、それ以下のスコアを出すことにどんな意味があるか、と問われてもなんのことやら分からない人もいるだろうが、スポーツをやらない人でも加齢とともに衰え行く体力、気力との戦いの厳しさは、誰もが知るところ。高齢化社会を元気で長生きと国を挙げての励ましもあって“元気ゴルファー田中さん”はゴルフ界だけでなくYouTube,経済誌など幅広く話題を集めて注目の人となっている。
だが、そんな最中に試練が。昨年2022年11月中旬の“事件”には驚かされたものだった。軽い脳梗塞が襲い3日間の入院、4日間自宅療養。幸い1週間後コース復帰、大みそかまでの1か月半、ほぼ毎日、ラウンドするまでに回復したが、エージシュートはわずか1回。1月、復活をにおわせ6ラウンドに成功するも2月は25ラウンドをこなしたものの、成功したのはまたもや1回のみ。さすがに往年の勢いは失せたかのように見えたものだった。
しかし、88歳の誕生日を2日後に控えた3月1日のことだった。日本シリーズでおなじみの難コース、東京よみうりCCを81の好スコア、通算回数を1164回と伸ばしたのが良いきっかけとなったのだろうか、3日の誕生日には85。以後、4日連続、さらに回数を重ね3月は計11回、通算1174回と勢いに乗って走り出したのである。かくして年齢別エージシュート数は、自己最多の86歳時の年間246回には及ばず178回とペースダウンしたものの、83歳時から数えて5年連続の100回越えの快挙達成を果たしたのである。
一生に一回あるかないかのホールインワンと匹敵するエージシュートで1000回をはるかに越える田中さんである。軽症だったとは言え麻痺が残るなど心配された88歳の大ピンチ。だが、その足取りは驚くほど軽やか、そして、自信に満ちて軽やか。ひやひやして見守る周囲を憚ってか、遠慮がちだが、「年が年だけに皆さんにご心配をかけてごめんなさい」と心から頭を下げて回っている。だが、病後は休みをしっかり入れ、以前にもまして体を気遣い顔色ピカピカ、体調万全。情けない弟子の身で言えたことではないが、ゴルフは以前よりしたたかさを増したと見る。さらに生意気を言わせていただくなら、88歳、米寿を迎えゴルフに重厚感が増してきた。名人は新たな時代へ入ったと感じる。3月29日には、チャレンジ協会コンペで名人を交え3人がエージシュート達成した。気をよくした名人は4月5日、自己3回目のホールインワンを達成した。エージシュートは新時代へ。詳細はまた次回。
◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。88歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。