金谷拓実が初日から堅首でメジャー初V 昨年乳がん告知された母を鼓舞…26H激闘17番スーパーショット


通算11アンダーで初日から首位を守る「完全優勝」を飾った金谷拓実(カメラ・頓所美代子)

通算11アンダーで初日から首位を守る「完全優勝」を飾った金谷拓実(カメラ・頓所美代子)

◆男子プロゴルフツアー メジャー初戦 BMWツアー選手権森ビル杯 最終日(4日、茨城・宍戸ヒルズCC西C=7430ヤード、パー71)

 第3ラウンド(R)の残りと最終Rが行われ、金谷拓実(25)=Yogibo=が26ホールの激闘の末、初メジャー制覇を成し遂げた。初日から一度も首位を譲らず、通算11アンダーで逃げ切る自身初の完全優勝で21年4月以来の通算4勝目を挙げた。元アマチュア世界ランク1位の逸材は、5年シードと10月19日開幕の米男子ツアー、ZOZOチャンピオンシップ(千葉)の出場権を獲得。待望していた海外ツアー進出への足がかりをつかんだ。中島啓太(22)=フリー=は2週連続の2位。

 ツアー屈指の難関ホールでのスーパーショットで、日本タイトルを引き寄せた。1打リードで迎えた17番パー4だ。金谷は、残り195ヤードの左ラフから池越えの第2打で果敢に6アイアンを握った。今週のテーマとした「積極的なプレー」で池とグリーンの間にボールを落とし、ピン奥50センチにピタリとつけてのバーディー。「まさか」と自分でも驚く一打で優勝を決定づけた。

 台風の影響で天候の荒れた4日間、首位を譲らずの完全V。総合力の高さを見せて「自分らしいプレーを続けることができた」と笑顔で話した。舞台裏での験担ぎも好結果に結実した。3日夜は19年の初優勝時から「勝負飯」とするハンバーグを食べた。さらに「最近は最終日にいいプレーができていなかった」と、この日は黄色のウェアに白いズボンを着用。「(大学時代からの)勝負カラーで、アマチュアで優勝した時も」と初心に帰って、ビッグタイトルを手に入れた。

 優勝を届けたい人がいた。表彰式で、言葉を詰まらせながら「昨年、母が乳がんの告知を受けた」と明かした。昨年は20年のプロ転向後初めて未勝利で終わった。「母の姿を見てまた頑張ろうと思った」。アマ時代は車で遠征先まで送り迎えをしてくれた美也子さん。入退院を繰り返し、会場やテレビを通して応援してくれる母へ最高の激励を贈った。

 今回の優勝で5年シードと欧米ツアー2戦の出場権も獲得。賞金ランクも首位に躍り出た。昨季は海外転戦で結果が出ずも「(挑戦を)諦める気持ちは全くない」と不屈の闘志で今年2月にはアジアンツアーで初優勝して「自信を持ち始めた」。同じ東北福祉大の7年先輩に米ツアー8勝の松山英樹(31)がいる。親交の深い大先輩に追いつくべく「早く結果を出して、その位置でプレーしたい」と金谷。このメジャータイトルを、海外ツアー本格参戦への出発点にする。(富張 萌黄)

 ◆金谷 拓実(かなや・たくみ)1998年5月23日、広島・呉市生まれ。25歳。5歳でゴルフを始め、広島国際学院高2年の日本アマ選手権で17歳51日の大会最年少V。東北福祉大では18年アジア・パシフィック選手権優勝。20年プロ転向し、20年11月、ダンロップフェニックスでプロ初V。172センチ、75キロ。

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