◆男子プロゴルフツアー プレーヤーズチャンピオンシップ・サトウ食品 最終日(25日、栃木・西那須野CC=7036ヤード、パー72)
首位と2打差の3位からスタートした選手会長の谷原秀人(44)=国際スポーツ振興協会=が7バーディー、1ボギーの66で回り、通算24アンダーで並んだ長野泰雅(20)=福岡地行=をプレーオフ(PO)1ホール目で破り、今季初優勝をつかんだ。昨季最終戦の日本シリーズJTカップ(報知新聞社主催)以来の通算18勝目。選手会主催トーナメントで大会会長を務める谷原がプレーでも主役を張った。5週連続で最終日最終組を回った中島啓太(23)=フリー=は2打差3位。
勝てば主役、負ければプレゼンター。異例のPOを44歳の選手会長、谷原は楽しんでいた。「予選同組ですごいプレーを見せていた長野君と戦ってみたい、という気持ちだった」。同時に冷静でもあった。「僕はプレーオフの経験がある(今回5度目、これまで2勝2敗)。初めての長野君はどんなプレーをするかな、と見ていた」
18番パー4のPO。第1打で右の林に曲げた長野に対し、フェアウェーをキープ。「長野君はパーセーブする可能性もあったからバーディーを狙った」。谷原は残り151ヤードの第2打を9アイアンで5メートルのチャンスに。長野が先にパーパットを外した後、2パットのパーに切り替えて堅実に通算18勝目をもぎ取った。それは東北福祉大卒業生として100勝目にもなった。
選手会主催の大会のため、表彰式では谷原が優勝者にトロフィーを渡す予定だったが、急きょ変更。司会者が「『優勝、オレ』というわけにはいきませんので、プレゼンターは大会実行委員長の宮里優作プロにお願いします」とアナウンスすると会場は大盛り上がり。王者・谷原も「面白かった」とニヤリと笑った。
今大会は賞金総額5000万円。一方、同週開催の女子はツアー史上最高の3億円。6分の1だが、選手が運営も手がける大会には金額では測ることができない“価値”があった。石川遼はギャラリーの観戦エリアを決めるローピング担当として奮闘。選手会長は「石川プロがロープを(プレーエリアの)近くまで寄せてくれた」と感謝した。
予選の第2日には、同組の長野泰雅が60、蝉川泰果が64をマークした。タイガー・ウッズが名前の由来の若手両選手について、「僕も名前をタイガに変えようかな」とジョークを飛ばす余裕もあった。初優勝を逃した長野には「次、すぐに勝てるよ」と励ました。
優勝会見の冒頭。ギャラリー、ボランティア、スポンサー、選手に感謝した後、「これからも一歩ずつ、いい大会を目指していきたい」と真剣な表情で訴えかけた。名実ともにトップに立ち、男子ゴルフ界の発展を願う谷原ならではの言葉だった。(竹内 達朗)
会長に聞く
―40歳を超えて4勝目。勝ち続けられる秘けつは?
「うまくなりたいから。これから飛距離を伸ばすことは難しいので、精度を上げることを考えています」
―毎年、スイングを修正している理由は?
「プロゴルファーはみんな自分のスイングが嫌いなんですよ。少しでも良くしようと調整しています」
―自分の息子でもおかしくない年齢の選手とプレーオフ。
「27歳の時から地元の広島でジュニア(小学生)のイベントをしています。そこに金谷拓実や渋野日向子がいました。みんな覚えていてくれるからうれしい。男子は一緒に試合することにもなったから、楽しい。今の小学生とは戦うことはないと思いますけど」
◆谷原 秀人(たにはら・ひでと)1978年11月16日、広島・尾道市生まれ。44歳。12歳からゴルフを始め、瀬戸内高から東北福祉大を経て2001年にプロ転向。03年マンダムルシードよみうりオープンで初V。05年米ツアー参戦。06年の全英オープン5位。17年から3年間、欧州ツアー参戦。昨年は新ツアー「LIV招待」にも参戦した。生涯獲得賞金は12億6333万3983円(歴代8位)。178センチ、80キロ。家族は元アイドル「ココナッツ娘。」の妻・絢香さんと1男1女。