驚異のエージシューター田中菊雄の世界181 武藤一彦のコラム-名人が倒れた


 エージシュートは6月8日、1200回の大台に達した。ホームコースのよみうりGCを、コーチの女子プロ浪崎由里子さん夫妻らとのラウンド、田中さんはスタート前、「今日エージシュート達成なら生涯通算で1200回目。88歳、記念の記録となるラウンドだ、今日はバックティーから回ります」と宣言、レギュラーより約400ヤーも長い6458ヤードのバックティーに果敢に挑戦、41,45の86。エージシュートに2アンダー、快挙を見事、達成した。

 

 さらに翌9日、60人余が参加した伝統のコンペ「火曜会」はレギュラーティーから同コース。40,39の79、エージシュートに9アンダーの快挙、一気に調子を上げ、その翌週の13日から16日は千葉・木更津GC、茨城GCに遠征、4日間で3エージシュートを達成し通算回数は1204回だ。春、3月3日、88歳誕生日を迎えた名人のシーズン到来、今春も3、4月は各11回の計22回、5月14回と月間エージシュートは2ケタを記録、6月に入っていよいよ増産態勢へ突入と期待は高まった。だが、6月23日のことだった。予想外の事態が持ち上がった。田中名人が倒れた。

 

 携帯に田中さんから驚きの電話が入った。実はなかなか連絡が取れずにいた。名人には子供のようなところがあって、以前、「エージシュートをたくさん出すと武藤さんが驚く。それが楽しみで報告はできるだけ回数が増えてからするようにしています。電話がつながらないのはゴルフの調子がいい証拠。心配しないでください」と、いたずらっ子のような顔で言っていたことがあったのでタカをくくっていたが、電話は驚きの内容に混乱した。実は、と語った内容は信じられないものだった。「19日に帝京大付属病院で胃のポリープの摘出手術をしました。はい、いま入院中、ベッドから電話しております」―驚きに声も出なかった。

 

 「3,4,5月と体調もゴルフも好調。だが、6月中旬、地元かかりつけの病院の定期検診で胃にポリープが見つかり、その場ですぐ手術しても良かったが、後日、大学病院に入院、19日に手術した」という。「手術は午後2時半から夜8時までの5時間半。長時間かかった」。―本当にポリープ切除だけ?手術時間長すぎません?ぶしつけな問いには「糖尿治療の血液がサラサラになる薬を飲んでいるので慎重を期した」「術後の経過は順調。痛みもなし」「27日に退院します」調子に乗ってラウンドができるのはいつですか?には、「ラウンド再開は7月1日。〇〇さんが一緒に回るといって、くれてます」。―大丈夫ですか?「何が、ダイジョーブに決まってますでしょ。部屋にパター持ち込んで素振りしてます」
 病気?誰のことか!元気が跳ね返ってきた。人生は照る日、曇る日の繰り返しといわれるが、もう、ご本人にゆだねるしかない。 驚異のエージシューター田中菊雄の世界である。

 

 ◆田中 菊雄(たなか・きくお) 1935年3月3日、島根・松江市生まれ。88歳。神奈川・川崎市を拠点にリフォーム、食品など5社、社員400人を抱える「北山グループ」取締役会長。東京・よみうりGCなど4コース所属、ハンデ5。初エージシュートは06年8月、71歳のとき静岡・富士国際富士コースを70で回った。173センチ、65キロ。