2015、16年賞金女王で日本女子ツアー21勝のイ・ボミ(35)が、所属契約先が主催するNOBUTA GROUPマスターズGCレディース(19~22日、兵庫・マスターズGC)で日本ツアー最終戦を迎える。通算14勝で親交の深い有村智恵(35)に、「スマイル・キャンディ」(笑顔を絶やさない人柄と日本のアニメ「キャンディ・キャンディ」の歌詞から)の愛称で幅広く愛された素顔やすごさ、日本ツアーに残した功績などを聞いた。(取材・構成=榎本 友一、富張 萌黄)
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ボミは10年に韓国ツアーの賞金女王となり、日本ツアーの予選会で翌年からの出場権を獲得した。11年から日本に主戦場を移して通算21勝。愛くるしい笑顔とおしゃれなウェアで「強くてかわいいアスリート」の代名詞的な存在となった。
「その人気のすごさは私も体感しました。当時、日本ツアーは外国人選手が何週連続で優勝という状況で。『日本人は何で勝てないの』とよく聞かれました。ところが、ボミが活躍するようになってからは全然聞かれなくなった。ルックスだけでなく、彼女の人柄や日本ツアーを盛り上げた功績なんだと思います」
15年7勝、16年5勝で2年連続賞金女王に。平均ストロークも2年連続で1位と圧倒的な強さを誇った。
「すごく正確性の高い選手。ゴルフがシンプルで、常に同じスイングで自分の打ちたい距離の幅を打つ、ということをやっていた。同じことを安定してやり続ける強さがありました」
日本女子ツアー人気を支えた宮里藍らが米女子ツアーへ参戦。韓国人選手が日本ツアーを席巻し、人気低迷の恐れがあった中、ファンを集めたのがボミだった。おそろいの応援グッズや帽子などに身を包み、応援する熱心なファン「イボマー」の出現は社会現象にもなった。インスタグラムのフォロワー数は女子プロゴルファー屈指の23万3000人。契約する本間ゴルフの用品も売れ、日本ツアーの試合数や賞金額も増えた。
「ボミはいい意味ですごく子供っぽい。感情を人前で出すのが恥ずかしい、と思うことが素直に言える。うれしいとか、かわいいとか。選手も皆、彼女が好きでボミが優勝すると、悔しさもあるはずなのに不思議と喜んでしまう。後にも先にもこういう外国人選手は出て来ないと思います」
同年代で親交が深く、19年末の韓国でのボミの結婚式にも出席。引退の事前の相談はなかったという。
「今年7月に韓国で会った。彼女は韓国で永久シードを持っているから、韓国ツアーには出るのかなと思っていたら『もうやり切ったから試合はいい』と。幸せな決断だし、これからの人生をとことん楽しんでほしい、と話しましたね」
ファンクラブの会員は3000人超え。オフに交流飲食会を定期開催するなど、ファンサービスも有名だった。日本語を勉強し、礼儀正しい性格で愛された。
「ファンの方々とのコミュニケーションは見習わないと、と思って私も見ていました。彼女は自分が何かをやってあげたい思いが強いタイプで、ファンに応援してもらったら返さないと、という責任感を持っていた。一度、全てから解放されて自分の気の赴くままに過ごしてほしい。旦那さんもゴルフ好きだと言っていたから、プライベートゴルフを楽しんでほしい」(女子プロゴルファー・有村智恵)
◆イ・ボミの主な年表
▼10年 韓国ツアー3勝で賞金女王に。QT10位で日本ツアー出場権を獲得
▼11年 日本では未勝利も賞金ランク40位で初シード
▼12年 メジャー初Vなど3勝で賞金ランク2位躍進
▼13年 日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯など2勝で賞金ランク7位
▼14年 拠点を神戸市に移し、3勝で賞金ランク3位
▼15年 7勝で賞金女王に。初の年間賞金2億(3049万7057)円超え
▼16年 5勝で5人目の2年連続賞金女王。平均ストローク1位など6冠を獲得
▼17年 CATレディースで1勝。89期生「インターナショナルプロフェッショナル会員」に
▼18年 7年ぶりに0勝で賞金ランク83位で賞金シードを喪失
▼19年 賞金ランク21位でシード復活。韓国の人気俳優イ・ワンと結婚
▼20―21年 賞金ランク82位で賞金シードを喪失
▼22年 14戦で8度の予選落ち。富士通レディース9位が最高成績
▼23年 2月に今季限りでの日本ツアー引退を表明
◆有村 智恵(ありむら・ちえ)1987年11月22日、熊本市生まれ。35歳。父の勧めで10歳からゴルフを始める。宮城・東北高卒業後の2006年プロテストでトップ合格。08年プロミスレディスで初優勝。11年スタンレーレディス第1ラウンドでは、アルバトロスとホールインワン。09、11、12年に自己最高の賞金ランク3位。国内女子ツアー通算14勝。13~16年途中までは米国でプレー。21年12月に一般男性と結婚。昨年12月に妊活のため当面の休養を発表。159センチ、57キロ。