◆報知新聞社後援 女子プロゴルフツアー メジャー最終戦 JLPGAツアー選手権リコー杯 最終日(26日、宮崎・宮崎CC=6497ヤード、パー72)
山下美夢有(みゆう、22)=加賀電子=が2打差首位から4バーディー、2ボギーの70で回り、通算10アンダーで逃げ切って2位に3打差の完勝。大会4人目の連覇で1988年のツアー制施行後、6人目&最年少での2年連続女王を手にし、「山下時代」の到来を印象づけた。ともに史上初の2年連続賞金2億円突破&平均ストローク60台で、ド派手に締めくくった。来季は、海外メジャーでの活躍と出場圏内にいるパリ五輪出場を目標に掲げた。
完璧なシナリオで山下が2年連続でツアーの頂点に立った。最終戦まで申ジエ、岩井明の3人で争った女王争いを、6月以来の今季5勝目で決めた。赤いブレザーを羽織り、閉会式では女子プロたちからクラッカーで華やかに祝福された。「いやもう、うれしい。最後(18番パーパット)はしっかり決めて終われた。実感はまだないけど、もう少ししたら気持ちも分かるのかな」と頬を紅潮させた。
序盤は生命線のショットがぶれて2ボギーが先行も、8番で11メートルを沈めて伸ばすなど、70にまとめた。他を寄せ付けない“最強”ぶり。前人未到の平均ストローク69・4322で2年連続60台など、主要スタッツ5部門で堂々の1位。「前半戦は流れ良く4勝できた。(夏に)海外に行ってから自分らしいプレーができなかったが、最近はショットも安定し、自信を持ってプレーできた」とうなずいた。
本格参戦2季目の昨年、最年少で女王の座に就いた。オフにコーチの父・勝臣(まさおみ)さん(48)が営む会社を訪れ、10人超の従業員を前にあいさつした。「父が(私の指導で)会場に来られるようになり、年間女王になれたのは皆さんのおかげです」と感謝を伝え、一人一人にカバンとネクタイを贈った。両親には「パパとママも仕事あるけど、ゆっくりしてきて」と温泉旅行をプレゼントした。
この日は連続女王の称号を引っさげ、来年8月のパリ五輪出場を熱望した。世界ランクは日本勢2番手の22位で圏内だ。「五輪は特別で、すごく出たい。(パリは)行ったことないけど、めっちゃきれいな街」と思いをはせた。今年3戦に出場して、21位(全英)が最高と苦い思いをした海外メジャーにも積極参戦する方針という。父は「メジャーで優勝するというのは本人が一番目標にしている」と将来的な夢にも言及した。
今後、個人スタッフとして大阪桐蔭高ゴルフ部の同級生・井上花音(かのん)さんがサポートすることも心強い。来季からはマネジメント会社が変わり、スポットで戦う海外参戦にも、より適した環境を整える。「メジャーでいい成績が出せるように頑張りたい」。“美しい夢”にはまだまだ続きがある。(岩原 正幸)
◆山下に聞く
―今の気持ちを。
「一言で、すごくうれしい。(自分を)褒めてもいいかな」
―女王を決めた状態で迎え、リコー杯を制した昨年との違いは。
「今年は(女王争いが)接戦というか。2位の申ジエさんが海外でも成績を出していて技術もすごい。いい緊張感の中、一緒に戦えて、一生(記憶に)残る試合になった」
―8月中旬以降は苦しい時期が続いた。
「毎試合優勝を目指すが、スコアより納得のいくショット、技術的なところを求めている。そこ(内容)があまりかみ合わなかった」
―海外メジャーでの変化。
「持ち球はドロー(左に曲がる球)だけど、それだとピンに寄せられないコースもあって。ドローを嫌がり、フェード(右に曲がる球)気味の打球が出たり、その辺を変えてしまったのが良くなかった」
◆女子ゴルフのパリ五輪への道 24年6月24日時点の世界ランクを基準に算定する五輪ポイント上位60人が出場権を得る。〈1〉同ランク15位以内は各国・地域で最大4人〈2〉16位以下は〈1〉の有資格者を含めて最大2人が出られる。大会は24年8月7日から4日間、フランス・ル・ゴルフナショナルで、72ホールストロークプレーの個人戦で争われる。21年東京五輪は畑岡奈紗と稲見萌寧が出場し、稲見が銀メダルを獲得した。
◆山下 美夢有(やました・みゆう)2001年8月2日、大阪・寝屋川市生まれ。22歳。5歳から父の影響でゴルフを始める。大阪桐蔭高3年時の19年に全国高校ゴルフ選手権で優勝。同年11月のプロテストに合格し、21年4月のKKT杯バンテリンレディスで初優勝。昨年5月のワールドレディスサロンパスカップでメジャー初優勝。昨季は21歳103日のツアー史上最年少で年間女王に輝く。通算11勝。150センチ、52キロ。家族は両親と弟、妹。