目標は「アメリカで女王になる」「世界ランク1位」飛ばし屋「ブンちゃん」19歳・入谷響がルーキー一番乗りで初V


ツアー初優勝を果たし、コースを背に万歳する入谷響(カメラ・今西 淳)

ツアー初優勝を果たし、コースを背に万歳する入谷響(カメラ・今西 淳)

◆女子プロゴルフツアー ニチレイレディス最終日(22日、千葉・袖ケ浦CC新袖C=6594ヤード、パー72)

 プロ1年目の入谷響(19)=加賀電子=が初優勝を果たした。単独首位から出て4バーディー、4ボギーの72で回り、2位と4打差の通算12アンダーをマーク。ツアー屈指の飛ばし屋からついた愛称「ブンちゃん」が、実力派のそろう今季ルーキーたちの中で一番乗りの優勝を飾った。今季のメジャーVやツアー5勝を目標に掲げ、「アメリカで女王になりたい」と野望を語った。

 30センチのウィニングパットを決めた入谷はペコリとお辞儀すると、笑顔がはじけた。18番グリーンの脇で同学年の菅楓華、同期の都玲華らとハグし、涙が込み上げた。「一番に優勝したい気持ちが強かった。本当に一番うれしい」。2023年の神谷そら以来となるルーキーVをかみしめた。

 4打差の単独首位で最終日に臨む前夜。小5から師事する男子ツアー48勝の中嶋常幸(70)から「明日はなるようにしかならない。思い切ってやってこい」と背中を押された。この日は最大瞬間風速が16・4メートルの強風。「とんでもないゴルフ」と苦笑するほど、フェアウェーキープ率が26%に下がり、一時は後続に1打差と迫られた。残り220ヤードの第3打を1メートルに乗せバーディーとした10番パー5で流れを変えた。「前半は50点以下。後半はよく耐えたので80点」とうなった。

 6歳の時。愛知・豊川市の自宅近くのゴルフ場で1本100円の貸しクラブを振り、ゴルフの道を志した。ドライバーをブンブン振り回す姿に、師匠がつけたあだ名は「ブンちゃん」。競技に集中できる通信制の中京高に入学し、一日1000球を打って腕を磨いた。160センチ、75キロと体格は規格外。今季2位の平均飛距離258・2ヤードの新・長距離砲に成長した。

 「本当に大好き」と語る師匠との絆で頂点にたどり着いた。23年の最終プロテストは合格ラインに1打足りず「これからどうすればいいのか…」と泣き崩れた。だが、中嶋から「悔しがるのは今日だけにして、切り替えて頑張ろう」と励まされ前を向いた。「あの時の一打の重みを感じながらプレーできている」

 今季の野望は「デカめに言うと5勝。メジャーで優勝したい」。米ツアー挑戦も掲げ「来年か2年後に行きたい。アメリカで女王になる、世界ランク1位が一番の目標」と言い放った。中嶋も「おめでとうだけど、おめでとうと言いたくない。なぜなら響の目標に向かって、ほんの一歩にすぎない。この優勝を足掛かりにさらに頑張ってほしい」とあえて奮起を促した。

 “世界のブンちゃん”になる日を目指し、新たな戦いに挑む。(星野 浩司)

 中嶋常幸(入谷の優勝に)「おめでとうだけど、おめでとうと言いたくない気持ちもある。なぜなら響の目標に向かって、ほんの一歩に過ぎない。この優勝を足掛かりにさらに頑張ってほしい」

 ◆入谷 響(いりや・ひびき)2005年12月21日、愛知・豊川市出身。19歳。6歳からゴルフを始め、小学5年から中嶋常幸が主宰するトミーアカデミーで指導を受ける。岐阜・中京高(通信制)を経て、朝日大2年在学中。2度目の受験となった昨年のプロテストを7位で合格。QT(予選会)ランク18位。今季は優勝したニチレイレディスを含めて5度のトップ10入り。160センチ、75キロ。家族は両親、兄、姉。

 ◆入谷響「こんな人」

 ▼命名 「太鼓をたたくと波長のように響く。1つ言えば10のことが分かるイメージで」。父・勝則さん(61)が名付けた

 ▼骨折 愛知・天王小の3年時、学校のうんていから落ちて右手を骨折。俊足で常に動き回るわんぱく少女で、「運動は何をやらせてもできる」と評判だった

 ▼剛腕 母・綾子さん(57)によると、体力テストのソフトボール投げで同小の最長記録(当時)を樹立。豊川高で硬式、本田技研浜松で軟式の野球選手として活躍した父親譲りの“剛腕”ぶりを発揮

 ▼趣味 2・5次元ミュージカル鑑賞。「刀剣乱舞」が好きで「アニメやゲーム、劇場でも見る。かっこよくて泣ける」と推し活に励む

◆大好物目玉焼き  誕生日に「100個」おねだり

 入谷の母・綾子さんはこの日朝に愛知から新幹線で駆けつけ、18番グリーン脇でまな娘の初優勝を見届けた。「夢を追いかけて努力して、かなえて、私の子じゃないみたい」と喜びを語った。

 約10年前。小学生の娘に誕生日に食べたいものを聞くと「目玉焼き100個!」と即答された。今でも「毎朝3つは食べる。深夜1時に家を出発する時でも食べる」と入谷。多い日は10個食べる時もあり、塩こしょうのシンプルな味付けで調理する母は「卵の消費量がすごいです」と笑う。遠征先も外食時はレストランで必ずトッピングするほどだ。

 母いわく、2695グラムで生まれ「きゃしゃな子だった」。幼少期から父に「体を作るため、たくさん食べなさい」と言われ続け、今では丼2杯をペロリと平らげる。中でも、大好物1位の目玉焼きが、ツアー屈指の飛距離と勝負強さの原動力になっている。(星)

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