河井博大、ツアー転戦費用「クラウドファンディング」高額出資者と懇親会


 男子プロゴルフの11年日本プロ選手権日清カップヌードル杯王者・河井博大(45)=フリー=が8日、千葉・市原市の浜野GCで、インターネットを通じた資金調達システム「クラウドファンディング」の高額出資者との最後のコンペと懇親会を開催した。

 河井は、2組に分かれた男性出資者達と9ホールずつをラウンドした。時折、支援者に個別の技術レッスンも施し、好ショットには「ナイス!」などと声を掛けるなど、穏やかな冬晴れの下で和やかな一時を楽しんだ。

 今年1月、「もう一度プロゴルファー4000人の頂点へ! プロ歴20年 河井博大の挑戦」と題してインターネット上で200万円を目標額としてツアー転戦費用を募集。1口3000円から100万円までの10コースで、3月末までに計77人から271万6000円を集めた。

 支援者には、河井のサイン入りグッズや都内ホテルでの壮行会、コンペなどへの出席権、ヘッドギアへの広告ロゴ掲載など、値段に応じて様々な特典が与えられた。

 最高額の100万円を出資した茨城・水戸市内でゴルフ用品店「Do Golf」を営む小野仁志さん(50)はこの日のコンペに参加。河井は今季「Do Golf」のロゴ入りのサンバイザーをつけてプレーしたが「全試合毎週木曜日は、CSの1番ホール生中継を見てました。一喜一憂しながら速報もチェックしてました。1年間楽しく応援させて頂きましたね」と小野さんは話した。

 6月には20年ぶりにツアー会場に足を運び、応援したという。「18ホールついて歩きました。『茨城の宍戸と石岡での大会で河井プロを見てきたよ』と、お客さんから声を掛けられることもありましたよ」と明かした。

 11年3月の東日本大震災で被災し、お店も被害を受けたという。再興に向けて苦難と闘う日々の中、2か月後の5月、日本プロで39歳でプロ初優勝を飾った河井の姿を見て感銘を受けた。河井の著書「やめないでよかった~折れない自分をつくるための44のヒント~」も買い、読んだ。「つらい時は、無理をしてでも笑うことにしています。必ず運が向いてきますから」「弱気になった時は必ず、上を向こう」などの言葉に背中を押され、ファンになったという。

 河井は今季、パットの不調などで31位が最高で、賞金ランク122位(364万5216円)でシードを喪失。最終予選会も45位で来季は下部のチャレンジツアーが主戦場となる。コンペ後の懇親会で広島男児は「皆さんのご支援と応援を励みに頑張りましたが、結果で応えられなくて申し訳なかったです。今年で終わりじゃなくて、もう1回はい上がるのが僕のゴルフ人生じゃないかと思っています。45歳。1年、1年が勝負になりますが、明日から来年に向けて前向きに練習を頑張っていこうと思っています。チャレンジで頑張って、推薦などでツアーにも出て、来秋のリランキングまでに1円でも多く稼いでまた返り咲きたいと燃えています」と熱い言葉で挨拶した。

 男子ツアーを1シーズン転戦するには年間1000万円かかるとされる。河井の画期的な試みは、最終予選会を突破し、ツアー本格参戦する若手男子ゴルファーにとっても新たな資金調達の手本となりそうだ。「ぜひ続く若手に出てきて欲しいですね」と河井も小野さんも声をそろえた。今回の企画を通じて、ゴルフ関係者から厳しい声も浴びた河井だが「結果は出せませんでしたが、この企画を通じて全国に自分を見て応援してくれる人が居るんだと気付かされて、うれしかったです。懇親会やコンペなどで言葉を交わしたり、身近に接することができて、こんな自分でも見てくれている人がいるんだと励まされた。この企画で知り合えた方々を大切にしたい。個人事業主のプロゴルファーにはいい企画だと思います」と総括した。

 小野さんはこの日、河井の著書を持ち込み、サインをもらって大事そうに持ち帰った。「来年からも河井プロを応援していきます。もちろん、またこういう企画があればぜひ考えたいですね。今日、直接お会いしてプロの前向きな気持ちを聞けたので楽しみです。ぜひ今こそ、ご自身の著書を読み返して、あきらめずに頑張って欲しいですね」と満足そうな笑顔でゴルフ場を後にした。

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