女子プロゴルフツアーのサントリーレディスは8日から4日間、兵庫・六甲国際GC(6538ヤード、パー72)で行われる。宮里藍(31)=サントリー=が今季限りでの現役引退を表明後、初戦を迎える。藍が本格参戦した2006年から米ツアー密着取材を続けるなど公私に親しいフリーアナウンサーの安藤幸代さんが、スポーツ報知に手記を寄せた。
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引退会見で「自分の理想とする姿はもうそこにはなかった」と清々しいまでに言い切る宮里藍選手に、昔から変わらない「藍ちゃんらしい」責任感の強さを感じずにはいられなかった。
誰よりも高いプロ意識と責任感の強さが彼女の力の源。常に戦い勝ち続ける自分=「理想の自分」を感じられなければ引退すべきという今回の彼女の決断は腑(ふ)に落ちた。この責任感の強さこそが、私の思う「藍ちゃんらしさ」であり、何より、宮里藍を語る上で外せないものだと思っている。
米ツアーで思い出すエピソードがある。世界ナンバーワンに輝くまでの過程で、彼女は自身の考える「理想のナンバーワン像」と度々葛藤していた。「ナンバーワンとして英語も完璧で、人としても素晴らしくあらねばならない。『ナンバーワンとはこうあるべき』という思いが強すぎて、今の自分はナンバーワンに相応(ふさわ)しくないのでは?と自分で自分のことを難しくしてしまって」。
その心の内を明かしてくれた時には既に葛藤を自分の中で消化しており、おどけるように言ってはいたが、高校生の時から変わらない生真面目で真っ直ぐな性格を微笑ましく思う反面、この責任感の強さが今後彼女を苦しめなければいいなと案じていた。それほどまでに、良くも悪くも「責任感の強さ」と常に隣り合わせであったように思う。
今週は、ホステスプロとして臨むサントリーレディス。良い時も悪い時もサポートし続けてくれた所属先に、当然ながら「責任感」をもって恩返ししたいと誰よりも思っていることだろう。けれど、そこにはもう自分を苦しく追い込むネガティブなものは微塵も感じられない。
「今はとにかく勝ちたい気持ちでいっぱいです!」とやり取りした時の言葉のワクワク感は、サントリーレディスで初優勝を飾った時の「(最終日の)スタート前からワクワクして仕方なかったんです」と話してくれたあの時に少し似ていた。メンタルがプレーを大きく左右する選手なだけに、気持ちが目標の一点に向かい、こうと決めた時のプレーの凄さと集中力は私が語るまでもない。
「身震いするね」。彼女のプレーを見ながら、思わずギャラリーが口にしていたこともふと思いだした。そんなプレーを、もう一度、想い出の大会で見てみたい。
◆安藤 幸代(あんどう・ゆきよ) 2000年共同テレビ入社。現在はフリーアナウンサーとして活躍。主にゴルフリポーターとして活動し、2006年より宮里藍の米ツアー密着取材を開始する。米ツアー初優勝までの道のりをまとめた「最高の涙」「最高の涙 宮里藍、世界女王への道」(幻冬舎)を上梓。