◆女子プロゴルフツアー サントリーレディス第3日(10日、兵庫・六甲国際CC=6538ヤード、パー72)
今季限りでの引退表明後、初の試合となった宮里藍(31)=サントリー=は71で回って通算1アンダー、50位から33位に浮上した。体調不良の影響で大会前の2週間、練習ができない“ハンデ”を抱える中、スコアを伸ばした。最終日は全精力を注いでベスト10入りを目指す。韓国のキム・ハヌル(28)=HITE JINRO=が通算14アンダーで単独首位に立った。堀琴音(21)=東芝=ら3選手が3打差2位。
6番パー3。藍は食い入るように、1打目の行方を見つめた。「届け~」。観衆の祈るような声もむなしく、球はグリーン手前のバンカーに入った。2打目を寄せきれずボギーを叩くと、その後もショットは乱れた。目指した猛チャージは不発に終わり「やっぱりショットが…」と悔しさをにじませた。
最終18番の2打目など合計6回、ショットを放った直後にクラブから右手を離した。球は左右に曲がり、距離感も合わない。「ドライバーは合格点だったけど、セカンド(2打目)以降は30~40点だった」。アイアンショットが最後まで復調しなかった。
首位とは13打差の33位。苦しむ理由は、調整不足だ。コーチで父の優さん(71)によると、5月中旬に気管支炎を発症。せきが止まらず、同下旬には右脇腹も痛めたという。今週に入って脇腹の痛みは引いたが、一時はクラブを振るだけで痛みが走った。父は「大会前の2週間、打ち込みが全くできなかった。ショットのタイミングが合わないのはそのせい。本当は予選さえ通ってくれたらと思っていた」と娘を気遣った。
初日、2日目と同様にラウンド中も何度もせき込んだ。ただ本人は体調面への質問を受けても、一切言い訳をしなかった。ショットがダメなら、パットでしのぐ―とばかりに1、14番ではともに3メートルを決めバーディー。グリーン上で粘って、意地は見せた。
ラウンド後は約300人の子供たち一人一人と目線を合わせながら、丁寧にサイン。子供から受け取った手紙を読み終えると、居残り練習で約30分、汗を流した。「明日はしっかり60台を出して大会を少しでも盛り上げたい。欲を言えばトップ10で終わりたい。最終ホールまで泣きたくない」。11位との差は7打もある。だがどんな困難な状況でも諦めない。不屈の魂で藍ははい上がる。(高橋 宏磁)