【日本S】宮里優作、2000年片山以来の2人目最終戦逆転賞金王へ絶好3差8位発進


13番で第3打バンカーショットを放つ宮里

 ◆報知新聞社主催 男子プロゴルフツアー 今季メジャー最終戦・日本シリーズJTカップ第1日(11月30日、東京・東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)

 賞金ランク2位から初の賞金王を狙う選手会長の宮里優作(37)=フリー=が、首位に3打差8位の好発進を決めた。最終組でプレーし、終盤は霧雨と日没で視界不良の難しいコンディションとなったが、1アンダーで耐えた。逆転賞金王の条件は優勝。史上初となる選手会長の賞金王を狙う。同じく最終組で賞金1位の小平智(28)=Admiral=は、首位と8打差の26位と出遅れた。

 何が起ころうと、絶対にあきらめない。優作が勝負師としての生きざまを見せた。17番パー5。バーディーパットは、わずか約60センチの短い距離だが、濃い霧雨で日の光が届かない。「ラインが全く見えなかった」。暗がりの中で数秒、カップをにらみつけた。腹は決まった。「まっすぐ強めに打つ」。ボールは心地いい音を立てて、カップに沈んだ。

 難関の18番は照明灯でグリーンが照らされ、2メートル強のパーパットをねじこんだ。「久しぶりのナイターゴルフでしたね。できればティーグラウンドでも照明が欲しかった。手元の距離感が分からないから、怖かったです」。耐えてしのいで、首位と3打差で好発進した。

 今季3勝。とはいえ、プロ生活は順風満帆ではなかった。アマ55冠の実績を手に、02年12月にプロ宣言。13年大会に勝つまで、10年以上も初勝利の壁にはね返された。「勝てない要因」とささやかれたのがパット。一時は体が思うように動かなくなるほど悩んだ。13年10月のコカ・コーラ東海クラシックでは「グリーン上で手も体も動かなくなった」ほどだ。

 10年以上も試行錯誤を繰り返し、パターを現在の握りに変えたのは13年冬頃。左手は通常の形で握り、右手は親指と人さし指でパターを包み込むように握る。「4年ぐらいは握り方を変えてない」と、ようやく納得できる形にたどり着いた。今季の平均パットは1・73で部門別ランク1位。「勝てない要因」を克服し、いつしか「パットの名手」と呼ばれるようになった。

 賞金ランク1位の小平とは、約1700万円差。逆転には優勝が条件になる。過去に最終戦で勝って賞金王に輝いた選手は片山晋呉一人。選手会長の重責を担いながら日本シリーズを勝った選手も、賞金王になった選手もいない。歴史を覆すのは容易ではない。ただ、事実の前にひれ伏すつもりもない。「明日また頑張ります」と決意を込めた。

 13年大会では妹で今季限りで現役を引退した女子の第一人者、藍(32)ら家族が見守る中で、悲願のツアー初優勝を飾った。「もしかしたら(妹が)応援に来るかも」。闘病中の父・優さん(71)は応援に来られないが、勝利の女神は最高の援軍になる。意志あるところに道は開ける。(高橋 宏磁)

 ◆最終戦を制しての逆転賞金王 日本ゴルフツアー機構によると、最終戦を優勝しての逆転賞金王は1973年のツアー制施行後、2000年のファンケル・オープンin沖縄の片山晋呉の1度だけ。

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