【武藤一彦 王者の系譜】石川遼はピン位置変更で「一生の思い出になるショット」


プレーオフ3ホール目の18番、ティーショットを放つ

プレーオフ3ホール目の18番、ティーショットを放つ

 ◆報知新聞社主催 男子プロゴルフツアー今季最終戦メジャー 日本シリーズJTカップ 最終日(8日、東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)

 これぞ石川遼、会心のショットとパットがプレーオフ3ホール目に凝縮して見事だった。優勝を引き寄せ、今平の賞金王も手繰り寄せた。日本ツアーの威信は守られ、新たな歴史が始まった。

 石川対ケネディのプレーオフは2ホールを終え膠着(こうちゃく)状態。ケネディは石川のミスを狙ってグリーン手前からの手堅い攻略に徹し、長期戦となった。石川も必死に攻めるがとどめを刺せなかった。3ホール目。競技委員会は手前28ヤード、右5ヤードの予定だったピンポジションを1ヤード右に移動した。

 プレーオフにはさまざまな思惑が作用する。トーナメントの演出家と言われる競技委員会は大会前に「優勝スコアは8アンダー」と公言。思惑通りの結果に収めて驚かせたが、プレーオフ3ホール目の“改造”は、選手の決意を強気に変え状況を急展開させた。ケネディの持久戦作戦は破綻し、球は急傾斜を転げ落ちた。石川は4アイアンでコントロールショットからフルショットに変え強いドロー。右サイドから強気に攻め、ピン左下2・5メートルにつけた。表彰式では「気合を入れ、絶対に右に外すまいと打った。一生の思い出になるショット」と言った。

 15歳だった高校生がプロツアーに優勝して今年で13年目。石川は28歳になった。当時のライバルだった26歳の堀川、時松と浅地も今大会を盛り上げた。33歳の池田は11年連続優勝記録を更新中、30歳の小平は米ツアー優勝と結果を出した。全て石川効果といっていいだろう。

 1歳下の今平は27歳。18番でダブルボギーをたたき優勝を逃したが、あれをミスと片付けるのは妥当ではない。「決めにいったけど左へいった。優勝を逃したのは悔しいけど賞金王になったことはうれしい」。下り1メートルのパットを4メートルもオーバーさせた勇気は、挑戦した結果である。試練はこうした形で、今後いくらでも出てくる。その時への準備だった。石川が生き返り、日本男子ツアーに元気が戻った。今回の優勝で東京五輪の代表権争いが楽しみだ。五輪が楽しみになった。(ゴルフジャーナリスト)

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