石川遼、逆転V 死闘PO3ホールで幕「勝てるとは思わなかった」最年少10億円


シーズン最終戦を勝利で飾り、佐藤キャディー(手前)と抱き合って喜ぶ石川遼(カメラ・生澤 英里香)

シーズン最終戦を勝利で飾り、佐藤キャディー(手前)と抱き合って喜ぶ石川遼(カメラ・生澤 英里香)

 ◆報知新聞社主催 男子プロゴルフツアー今季最終戦メジャー 日本シリーズJTカップ 最終日(8日、東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)

 石川遼(28)=カシオ=が通算8アンダーで並んだブラッド・ケネディ(45)=豪州=とのプレーオフを3ホール目で制し、15年以来、4年ぶりの大会制覇を遂げた。来季の大会出場権も獲得。2打差5位から7バーディー、3ボギーの66で回り、大会史上2人目の選手会長Vに輝くと共に通算17勝目。最年少で生涯獲得賞金は10億円を突破した。世界ランクも81位前後に浮上する見込みで、来夏の東京五輪出場にも望みをつなぐ勝利となった。

 2メートル半のウィニングパットを沈めると、石川は万歳とばかりにパターを放り投げ、佐藤賢和キャディーと抱き合った。息をのんでグリーン周りで見守った大観衆も熱気の渦に。「勝てるとは思わなかった。信じられない。18番でバーディー取って優勝できたのは一生の思い出です」。ケネディとの激闘プレーオフを3ホール目で制し、4年ぶり大会Vの喜びをかみ締めた。

 5月に初棄権から夏場に2勝。11月は一転、2週連続予選落ちと波乱万丈の1年だった。この日も前半は安定したプレーで、後半は今年を象徴するようなドラマチックなゴルフを展開した。11番のバーディーで今大会初の首位タイ浮上も、直後の12番ボギーで3位転落。16、17番連続バーディーの後、18番で2メートルのパーパットを外しプレーオフへ。「泥臭く、へばりついた」と笑いながら、「楽しかった。今までの優勝で一番」と充実感を漂わせた。

 優勝の裏に、4日間でフェアウェーキープ率3位と、武器の「ショット」の復調があった。5月に腰痛で棄権後、スイングはしっくりこなかった。夏の2勝時も「理想とは違った」。毎晩、寝る前、頭に思い浮かべ「腰を悪くし、(4勝した)09年頃のようには前傾姿勢がインパクトで保てなくなった」と気づいた。練習で自身のスイングを動画で撮るなど、00~02年のタイガー・ウッズ(米国)の全盛期を理想として取り組むと、今週ようやく手応えを得た。本人は「たまたまです」というが、この日は赤のセーターと黒のパンツで、ウッズの最終日の“勝負コーデ”と同じ色使いだった。

 来年は東京五輪イヤーに突入する。代表は世界ランクで日本勢上位2人。この優勝で現在のランクは113位から81位前後の日本3番手に浮上する見込み。代表の可能性については「首の皮一枚つながった」と自ら表現した。昨年末に五輪会場の埼玉・霞ケ関CCを2度“下見”したことを明かし「距離も長くなり、世界仕様だなと。可能性がある限りは諦めたくない」と、五輪への思いを強くした。前週からは風邪をひきながらも腹筋や広背筋を鍛える新メニューに着手。世界基準の体作りを続けている。

 女子の渋野日向子が8月の海外メジャーAIG全英女子OPを日本人42年ぶりに制した姿を見て、石川の心は揺さぶられた。五輪、そしてメジャーで頂点へ「誰だって世界一のプレーを見たい。男子では自分が成し遂げたい」。“世界一”の山を登り切るための戦いは続く。(宮下 京香)

 ◆ゴルフ東京五輪への道 男子は20年6月23日時点の世界ランクを基準に算定する五輪ポイント上位60人が出場権を獲得。〈1〉同ランク15位以内は各国・地域で最大4人〈2〉16位以下は〈1〉の有資格者を含み最大2人が出られる。男子は20年7月30日から4日間、埼玉・霞ケ関CCで72ホールストロークプレーの個人戦で競う。

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