【2017年6月11日】宮里藍さんの涙と大観衆の「ありがとう」…サントリーレディスで国内ツアー最後のラウンド


サントリーレディス最終日、目を潤ませ言葉を詰まらせる宮里藍さん

サントリーレディス最終日、目を潤ませ言葉を詰まらせる宮里藍さん

 2017年6月11日。国内女子プロゴルフツアーのサントリーレディス最終日。33位で出た宮里藍さん(当時31)は5バーディー、4ボギーの71で回り、通算2アンダーの26位で終えた。5月末にこのシーズン限りでの引退を発表し、この大会後は主戦場の米ツアーに参戦。結果的に、この日が国内ツアー最後のラウンドとなった。

 誰もが「ありがとう」と感謝の思いを胸に刻むラストシーンだった。人、人、人。大観衆に取り囲まれた最終18番パー4。藍さんはグリーン右カラーから、パターで4メートルのパーパットを沈めた。笑顔で右拳を握ると、まるで優勝したかのような大喝采を一身に浴びた。見守ったコーチで、父の優(まさる)さんも「最後に長いのをよく決めたね」と感慨深げだった。

 03年から所属契約してきたサントリー主催のホステス大会。この日、藍さんは同社のイメージカラーを想起させる、鮮やかな水色のシャツを着て臨んだ。06年からの米ツアー挑戦後も変わらぬ支援を続けてくれた、所属先への藍さんなりの感謝の思いが感じ取れた。朝の練習場から大勢の報道陣やファンが一挙手一投足を見逃すまい、とその姿を追いかけた。成田美寿々、イ・ナリ(韓国)と同じ組。優勝を争う組から離れてはいたが、大勢のギャラリーがその勇姿を目に焼き付けよう、と18ホールを取り囲んだ。

 藍さんは中盤以降、プロ生活15年で磨き抜いた小技でギャラリーの期待に応えた。10番では花道から残り25ヤードをチップインバーディー。12番パー5では3打目をバンカーへ。パーセーブも厳しい状況から、残り12ヤードの4打目をカップに沈めた。「私らしい内容だったと思います」と胸を張った。

 会場の兵庫・六甲国際GCには、4日間で大会史上最多の3万4750人が詰めかけた。最終18番ホールでは「藍ちゃん、ありがとう!」の声が断続的にこだました。藍さんの大きな瞳にも、ホールアウト直後から涙があふれた。閉会式のあいさつで「私にとって一生思い出に残る1週間でした…」と感極まり、何度も言葉を詰まらせた。それを受けて再び声援や拍手が注がれる。感動に包まれた、とても温かい時間が流れていた。

 まさに、プロゴルファーの鑑のような選手だった。キラキラした晴れやかな笑顔に卓越した小技。明朗快活で沖縄出身者らしい人懐っこい性格。ファン、同僚選手、関係者の誰からも愛された。

 残した実績も輝かしい。日本ツアー通算15勝。米ツアー9勝。「平成のゴルフブーム」を牽引して2010年には、10週間にわたってプロゴルフ界では日本人唯一となる世界ランク1位に君臨した。155センチと小柄ながらパワー化の進む世界に、卓越した小技で対抗して11年には欧州女子ツアーの賞金女王にもなった。

 大会の観客動員記録にも、ファンの記憶にも残った藍さんの国内最終戦だった。「自分が思っていた以上に何十倍のたくさんの方が足を運んでくれた。こんな幸せなことはない。私のプロゴルファー人生でこれ以上ない最高の1週間だった」と藍さん自身も感謝の言葉を残した。女子プロゴルフ界に一時代を築いたスーパースターの国内最終ラウンドで感じた心の温かさは、今も忘れられない。(榎本 友一)

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