渋野日向子、涙の4位も18番笑顔のバーディー締め 世界ランク13位浮上「もっともっと強くなれる」


 ◆米女子プロゴルフツアー メジャー最終戦 全米女子オープン 最終日(14日、米テキサス州チャンピオンズGCサイプレスクリークコース=6731ヤード、パー71)

 昨夏のAIG全英女子オープン覇者で1打差首位から出た渋野日向子(22)=サントリー=は、日本人初のメジャー2勝目を逃し、悔し涙を浮かべた。寒さと重圧からアイアンショットの精度を欠き、2バーディー、5ボギーの74と落とし逆転を許した。それでも初出場での4位は日本人最高。不振を乗り越え、東京五輪の代表圏内にも3週ぶりに返り咲いた。

 渋野は4位でメジャー2勝目を逃した。我慢の展開で74と粘り切れず「めっちゃ悔しいけど、これが今の実力と受け止めるしかない」と唇をかんだ。届かなかったビッグタイトル。「今年一年を考えると、よく頑張ったと思うんですけど…」と言葉に詰まり、悔し涙で目を潤ませた。

 悪天候によって前日から順延された最終ラウンド(R)は、気温6度の寒さで飛距離が出せず難度が上がり、緊張、重圧からショットに狂いが生じた。ミトンのグラブで手を温め、打つ直前まで体を冷やさぬようジャケットを羽織った。「(寒さで)飛距離が落ちるどころか、自分のスイングもできずに終わってしまった」。1打リードで出たが、7番のボギーでオルソン(米国)に並ばれ後半へ。10番、グリーン手前から“3パット”で首位から陥落すると、11番も連続ボギー。16番では3メートルの好機を逸した。最初のパットがショートした17番のボギーは「情けない。ださいな」とうつむいた。67で回った金阿林(韓国)に大会史上最大に並ぶ5打差逆転を許した。

 悔しさの一方、随一の歴史と格を誇る全米女子オープンで成長の跡は残した。18番は10メートル以上を思い切り良く沈め、21年につながる笑顔のバーディー締め。「だからこそ悔いはない。2か月前より、米ツアーで戦いたい気持ちが強くなった。この悔しい気持ちは米ツアーでしか晴らせない。絶対またここで戦いたい」と、強く決意した。

 6月の開幕戦、8月の全英、10月末の国内復帰戦と今季節目の試合ではどん底を経験した。秋の米国遠征で悩み、試行錯誤の末、ようやく11月後半から復調気配を見せた。足幅を狭くしたパットの構えを、どっしり構える以前のものに戻し、「過去の自分を捨て、新しい自分をつくる」と精神面の変化を実感した。

 約1年ぶりにコンビを組んだ藤野圭祐キャディーは証言する。「去年までのショット力に加え、マネジメント力が上がった。パワーアップバージョンです」。予選Rが異例の2コースで行われたため、通常の2倍にあたる計3・5Rを回る入念な準備で臨み、「打球の行っていい所、悪い所がしっかり頭に入っていた」と藤野氏。予選2日間は、ピン狙い一辺倒だった以前と違う攻め方で68、67と好発進した。

 初出場で4位は日本人過去最高成績。世界ランクは16位から13位に上がり、東京五輪出場圏内の日本人2番手で年内を終えそうだ。笑顔と涙、収穫と課題の1週間。「気持ちの変化でこれだけ変わるんだな。技術も上がったらもっともっと強くなれる。つくり上げ始めた新しいゴルフを、完成に近づけていきたい」。苦難を乗り越えた渋野が胸を張って五輪イヤーへ向かう。

 ◆渋野と涙 昨夏の全英優勝2週後の国内ツアー・NEC軽井沢72、首位に並んで迎えた最終日18番で決めれば優勝のバーディーチャンスからまさかの3パットで1差3位。涙をこらえてクラブハウスに戻ったが、1人になったロッカールームで泣いた。「(涙は)人前で見せるものではない」がポリシー。今回はラウンド後のインタビューで涙を浮かべ、それだけ悔しいV逸だった。

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