男子ゴルフの21年メジャー初戦、マスターズは4月8日から4日間、米ジョージア州オーガスタナショナルGCで開かれる。2015年大会王者のジョーダン・スピース(27)=米国=は、約2年のスランプを乗り越え、6年ぶりのゴルフの祭典での復活Vを静かに狙っている。
射程距離の長い巧みなパットを最大の長所に、若くして一時代を築いた。15年には大会史上2番目の若さとなる21歳259日でマスターズを制すなど、メジャーの全米オープンも含めて年間5勝を挙げ、世界ランク1位にまで一気に上り詰めた。
17年7月。全英オープンも23歳11か月26日で制し、“帝王”ジャック・ニクラウス(23歳6か月0日、米国)に続く歴代2番目の若さでメジャー3冠を獲得した。「生涯グランドスラムが次の目標」と明言し、その後の全米プロ選手権では史上6人目の4大メジャー全制覇の“生涯グランドスラム”を追いかけてきた。ところが、そこから不振に陥り、米ツアーでの通算勝利数は14で約3年半止まったままだ。
この2年はティーショットとパットに悩んできた。2020年2月には、世界ランク51位と13年に米ツアーに参戦後初めて50位以内から陥落。今年1月には92位まで落ち込んだ。しかし、そこから目覚ましい復調ぶりを最近見せている。
2月のフェニックスオープン第3ラウンドで、全盛時のようなプレーが戻った。ロングパットを次々とねじ込み、自己最少に並ぶ10バーディーの「61」をマークして首位タイへ浮上。最終日はティーショットが乱れて4位に終わった。それでも「まだ100%の自信はないけど、良い方向に向かっている。また優勝したいし、元に戻りたいとも思う」と確かな手応えをつかみ、うなずいた。翌週のAT&Tペブルビーチプロアマも第2ラウンド、第3ラウンドで首位に立つなど3位。3月のアーノルド・パーマー招待も優勝争いを演じて4位に入った。今年は6戦で3度のトップ5入り。世界ランクも53位まで巻き返し、米メディアでも「復活優勝は近い」などと報じられている。
そんな中で「世界一好きな大会」と公言するマスターズを来週迎える。オーガスタナショナルGC(7475ヤード、パー72)とは言葉通り、抜群の相性を誇った。14年の初出場から史上初となる9ラウンド連続のアンダーパーをマーク。14年は2位、15年大会で初優勝。続く16年大会でも初日から3日目まで首位を走ったが、最終日の景観美しい12番パー3で“オーガスタの魔女”に襲われた。第1打がグリーン手前の斜面から小川に入り、打ち直しの第3打も「何をしてしまったのかわからない」と大ダフリで再び小川へ。結局「7」をたたいて2位に終わった。
その後、その悪夢を引きずり17年は11位、18年こそ3位と盛り直したが、19年は21位。20年は46位と優勝争いからは遠ざかっている。27歳で迎える8度目の夢舞台。苦しみも知ったかつての“マスターズの申し子”が、どん底から這い上がって再びグリーンジャケットに袖を通す。
◆ジョーダン・スピース 1993年7月27日、米テキサス州ダラス生まれ。27歳。16歳で初出場した米ツアーで16位となる。テキサス大在学中の2012年にプロ転向し、13年のジョン・ディアクラシックで初優勝。米ツアー通算14勝。15年はマスターズ、全米オープンとメジャー2連勝。185センチ、84キロ。家族は両親と弟、妹。