◆女子プロゴルフツアー フジサンケイレディス最終日(25日、静岡・川奈ホテルGC富士C)
首位と1打差の2位から出た稲見萌寧(21)=都築電気=が5バーディー、1ボギーの67で回り、通算12アンダーの大会新記録で逆転優勝を飾った。通算6勝目、20―21年シーズン5勝目。今年は8戦4勝で優勝確率5割と驚異の強さ。心技体すべてがハイレベルの21歳が日本女子ツアーを席巻している。3打差2位は山下美夢有(19)=加賀電子=だった。
強い。強すぎる。稲見がまた勝った。
2位から出た稲見は1番パー4の第1打を左バンカーに入れたが、第2打を9アイアンでパーオンに成功。8メートルのバーディーパットをねじ込み、首位の山下を捉えた。続く2番も連続バーディーで早くも単独首位に。そのままトップを譲らず、今年開催されたツアー8試合中4勝。4月は4戦3勝と、19年11月に鈴木愛が記録したツアー月間最多優勝に並んだ。圧倒的な強さにも「別に4月は好きではない。というより嫌いですかね。花粉は飛ぶし、風は強いし」と笑顔で話した。
心技体―。すべてがハイレベルでそろう。
【心】4番、10番では本来であれば同じ最終組を回った申ジエ(韓国)が先に第1打を打つ場面で、先にティーショット。「アップダウンの激しいコースなので。進行の問題です」。ルール上は問題はなく、勝利のため自分のリズムを貫いた。
【技】パーセーブ率(89・92%)1位、パーオン率(73・82%)は2位。ツアー屈指のショットメーカーの原点は荒川河川敷の「新東京都民ゴルフ場」。小学生の頃、夜明けとともにラウンドし、学校が終わると再び河川敷ゴルフ場へ。「ジュニアは1日2100円で回り放題。小さい頃、普通の練習場の人工芝マットではなく、河川敷の天然芝でたくさんボールを打ったことは良かった」。毎日、送り迎えを繰り返した父・了(さとる)さんは証言する。
【体】「疲れています」と言いながらも継続的にトレーニングを続け、強じんな体力を身につけた。「世界一の選手になるためには世界一練習をしなければならない」。今季は全試合に出場予定の“鉄人”だ。
コロナ禍の影響で20、21年が統合された今季で5勝目。獲得賞金は1億188万8216円となり、初めて大台を突破した。「自分でもびっくり」。賞金ランクは4位から3位に浮上し、賞金女王も射程内。不動裕理が2003年に記録した年間最多10勝のツアー記録の可能性も十分にある。「優勝回数の目標はありません。勝てるだけ勝ちたい」。世界ランクも日本勢5番手の39位から上がることが確実で、東京五輪出場圏内の2番手の背中も見えてきた。どれだけ勝つのか。稲見の快進撃は続く。(竹内 達朗)
◆第1打の打順 スタートホールは競技委員が決定。くじ引きなどで決めることもある。次ホール以降は前のホールでスコアが良かった選手が先に打つことが原則。同じスコアだった場合、前ホールと同じ順番。ストロークプレーでは打順が入れ替わっても双方の選手にペナルティーはない。2019年のルール改定では準備ができた選手から先に打つ「レディー(準備)ゴルフ」が推奨されている。ただ、風向きをチェックするなどの目的で特定の選手を有利にさせるために打順を替えた場合、関係当事者全員が失格となる。
〇…今大会は奥嶋誠昭(ともあき)コーチ(41)がキャディーを務め、さらに盤石だった。「ショットはいいのでパットが入れば勝てると思っていました」と奥嶋コーチも納得の勝利だ。より高い技術を求め、意見を戦わせた。稲見は「私も言いたいことは我慢せずに言っています。ケンカはしょっちゅうです」と笑う。あくまで対等なコーチと選手の関係が絶好調の理由の一つとなっている。