日本女子プロゴルフツアー通算18勝で、1998年賞金女王の服部道子さんが15日、東京・渋谷区の代官山・蔦屋書店で初著書の「好転力」(世界文化社)の出版イベントに出席した。
7月16日に初の著書を上梓した。選手として30年あまり活躍したが、このほど本を執筆した契機は「私自身、すごくシャイで、自分のことを言うのがあまり得意ではなかった。そんな中でお誘いを受けたので」という。「好転力」のタイトルについては「コロナ禍で悶悶(もんもん)としている中で、何か少しでも前向きに進むきっかけになれば」と思いを込めた。
昨年1月頃から執筆に取りかかったが、すぐに新型コロナウイルスが猛威をふるう世の中となった。編集者とのやり取りもオンラインとなり「やっぱり難しかった」。初の著書とあり「あとは語彙ですね。趣味は本を読むことなんですが、他の方の本が素晴らしく見えて本屋さんに行けなくなった(笑い)。最後の3か月ぐらいは『職業はなんですか?』というぐらい引きこもって書いていました」と苦労話を明かした。
イベントに同席した、1988年ソウル五輪競泳男子金メダリストで、初代スポーツ庁長官の鈴木大地氏は「私自身、体は柔らかいので捻転力はあるんですけど、好転力は私に欠けているところ。読ませていただいてメモもしたし、勉強になった」と絶賛。ゴルフ以外のジャンルの著名人とトークイベントに出るのは初となった服部氏も「ゴルフも五輪競技になったことで、いろいろな競技の人とつながっていきたいという思いもありました。同年代ということで心強かったです」と感謝した。
今夏の東京五輪では稲見萌寧(都築電気)が、日本ゴルフ史上初の五輪表彰台となる銀メダルを獲得した。服部氏は日本代表の女子ヘッドコーチとして指導にあたり「五輪に出るだけでもすごいことなのに、彼女はすごく冷静で、彼女の空気感でプレーできたのが勝因」とたたえた。本の題名にあやかり、稲見の「好転力」については「初日よりも最終日のバックナインまで力をため込んで、最後にバッと引き離す強さはまさに勝負師。オンオフの切り替えに、自分をよく知っている。いい感じで好転していると感じます」とうなずいた。
コロナ禍での生活は今後もしばらく続きそうだ。一児の母として奮闘する服部氏は「前を向くきっかけがほしい方に読んでいただきたい。今はちょうど女性が社会的に求められている時代だと思うんです。特に働いていて家庭も持っている方は社会の中でいろいろな葛藤もあると思います。ゴルフについて書いた本ではあるけど、そういった方にも通ずるものはあると思うので、読んでいただけたらと思います」と改めて思いを語って締めくくった。