渋野日向子、批判もあったけど…686日ぶり優勝に涙


4人で行われたプレーオフを制し、1年11か月ぶりの優勝を決めた渋野日向子はトロフィーを手に笑顔を見せた

4人で行われたプレーオフを制し、1年11か月ぶりの優勝を決めた渋野日向子はトロフィーを手に笑顔を見せた

◆女子プロゴルフツアー ▽スタンレーレディス 最終日(10日、静岡・東名CC、6592ヤード、パー72)

 2打差5位で出た渋野日向子(22)=サントリー=が通算10アンダーで並んだ4人のプレーオフ(PO)を2ホール(H)目で制し、昨季(2019年)11月の大王製紙エリエールレディス以来となる涙の686日ぶり国内5勝目、日米ツアー通算6勝目を逆転で飾った。今年初めから取り組んだスイング改造とウェッジ4本態勢が実を結び、攻めのゴルフで6バーディー、2ボギーの68。なかなか成績が出ずに批判も浴びた苦難の道のりを経て、自信を取り戻した。

 富士の裾野で渋野が686日ぶりの頂点に立った。18番で繰り返し行われたPOの2ホール目。先に1・5メートルのバーディーパットを沈めた渋野は、同じ距離のペ・ソンウのパットが外れると両手で顔を覆い、むせび泣いた。「ウソなんじゃないかって。勝てなかった2年間は長かった」と大粒の涙をぬぐった。

 2打差で出て、8番で初バーディー。10番のボギーで「これはやばい、と気合を入れた」。チップインを決めた16番までに3つ伸ばした。1打差で迎えた18番、95ヤードからウェッジで1メートルに運ぶ「集大成」というこの3打目が効き、追いついた。POの1ホール目でも88ヤードから3打目を30センチへ。「100ヤード以内を練習してきたことが生きてうれしい」。4人のV争いで常にリードしたのが渋野だった。

 昨年12月の全米女子オープン、最終日に74で4位。「緊張で崩れる安定感のなさに、自分は変わらなきゃと思った」。親交のある石川遼(30)に助言を仰ぎ、今年からトップの位置が低い新スイングとマネジメント重視のウェッジ4本態勢で戦った。米ツアーでの成功を見据え、長期的視点に立った挑戦だが、当初は思うように結果が出ず、批判の声も当然、耳に入った。

 「プロとしてはダメだけど」と前置きしながら、「このスイングで勝った時に、ああじゃこうじゃ言うとった人を見返す気持ちは片隅にあった」と吐露した。だが、前週の日本女子オープンで連日4000人超の観客に見守られ「こんな、ろくでもない自分を応援してくれるんだ」と目頭を熱くした。

 全英女子を含め、5勝を挙げた2019年の残像とも闘った。スイングが体になじむとドライバーの飛距離が伸び、少しずつ理想に近づいた。6月のメジャー、全米女子プロでは2日目に予選落ち危機から残り2ホールで3つ伸ばすミラクルで、19年の攻めのゴルフを自身に思い出させた。「過去を捨てる」から「受け入れて、プラスアルファを積み重ねる」という心境に変化した。「今やっていることをやっていけば、2年前の自分よりも強くなれる。やってきたことが間違っていなかったから優勝できた」。涙は消え、心からの笑顔と強い渋野が戻ってきた。(岩原 正幸)

亡き山陽放送社長に感謝

 〇…渋野は、前所属先のRSK山陽放送社長でプロ入り前からお世話になった桑田(くわだ)茂氏(享年68)へ感謝の思いを語った。「どんな時も笑顔で迎えてくださり、桑田社長がいなければ、今の私はいない」。4月の海外遠征中に訃報が入った。自身が悩んでいた時期とも重なり「自分は何をやっているんだろうと、腹が立った」。以降は同局のマスコットのヘッドカバーをつけて戦っている。

 ◆渋野の今後の試合出場予定 15日に開幕する次週の富士通レディース(千葉)から11月18日開幕の大王製紙エリエールレディス(愛媛)までの国内ツアー計6試合に出場する見込み。その後、渡米し、同29日から始まる来季の米女子ツアーの出場権を懸けた最終予選会(米アラバマ州)に挑戦する。

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