松山英樹のマスターズ制覇を5年前に予言していた野球界の名将 「世界の頂点に立つには勝負を引き寄せる「何か」も必要」


第2ラウンド、ラウンドを終えて原辰徳氏からインタビューを受ける松山英樹

第2ラウンド、ラウンドを終えて原辰徳氏からインタビューを受ける松山英樹

 男子ゴルフの2022年メジャー初戦、マスターズは4月7日から4日間、米ジョージア州オーガスタナショナルGC(7510ヤード、パー72)で開かれる。米ツアー日本男子歴代最多7勝の松山英樹(LEXUS)が、大会史上4人目の連覇に挑む。

 昨年のマスターズでの松山の日本男子初のメジャー制覇の歴史的快挙を、その5年前に予言した野球界の名将がいた。しかも、勝つためのラストピースとして必要なものまで自らの経験をもとに言い当てていた。今回、2016年4月12日付の本紙1面の記事を再録し、振り返る。

 プロ野球・巨人前監督の原辰徳氏(当時57)がマスターズを初めて訪れ、スポーツ報知に特別観戦記を寄せた。2打差3位から出た松山英樹(24)=LEXUS=は通算イーブンパーの7位に終わったが、日本人初の2年連続トップ10入り。原氏は「近未来のメジャー制覇を大きく予感させる」と絶賛し、日本人初のメジャーVへ期待を込めた。

 松山君のプレーは、近未来の日本人初のメジャー制覇を、とてつもなく大きく予感させてくれました。全てを非常に高いレベルで持ち合わせている選手。パワーも精度も、オーラというか格みたいなものも。だからどういう大舞台に行っても融合できる力を持っている選手なのでしょう。自分のルーチンや間合い、呼吸というものがすごくしっかりしていて、世界の猛者たちと伍(ご)して戦うパワー、技術も持っています。メジャーの難しい設定でも立ち向かって行く、食らいつく姿勢に気持ちの強さを感じましたね。

 毎年、この時期は、プロ野球の開幕直後で忙しくしておりましたので、マスターズにお邪魔するのは今回が初めてでした。第2ラウンドから松山君の組について歩きました。今回、初めて松山君のプレーぶりを見て、強く感じるところがありました。

 いろいろな勝負がありますが、勝つべくして勝つ勝負が一番難しい。そういうところに近づくにはかなりの精進が必要です。今大会前、松山君の優勝への期待は日本のみならず世界中から高まっていた。野球でも勝つべくして勝つチームは、とてつもなく強い。松山くんは、そういう選手に近づきつつあると思います。礼儀正しく真面目な好青年。7位で反省すべき部分も、きちんと受け止めて肥やしにしていくと思います。

 世界の頂点に立つには勝負を引き寄せる「何か」も必要です。僕が優勝した2009年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の時に感じたのは観客、空気、風を敵と思わず味方にするということ。全てを前向きに捉え、自分のプラスに変えていく。嫌な顔やマイナスな流れにするようなものを出さない。そういうことが非常に大事だと思います。ゴルフも似ているのではないでしょうか。

 オーガスタナショナルGCは、緑豊かで非常に美しい舞台でした。まさに世界の名手たちが集まる名コース。米ツアー選手のレベルの高さも感じましたね。ジェーソン・デー、ダスティン・ジョンソンのドライバーショットのパワーは規格外。今回優勝したダニー・ウィレットは今朝、練習場で見ていたらショットの精度がものすごかったですよ。

 世界中から集ったマスターたち、それを見に来たパトロンたちも非常に誇らしげで、誰もがこの舞台の歴史の重さをかみしめていました。野球のワールドシリーズ、WBC、巨人―阪神戦、アメリカンフットボールのスーパーボウル。歴史と伝統があって、独特の重さがあるのは共通した雰囲気に感じましたね。非常に鮮明に、印象に残る大会でした。

 ◆09年の第2回WBC イチロー、ダルビッシュ、田中将大らをそろえた日本代表を率いたのが巨人・原監督。決勝トーナメントからはダルビッシュを抑えに回して準決勝で米国に9―4。決勝の韓国戦は延長10回にイチローの中前2点打で勝ち越して大会2連覇を達成。この年、巨人でも7年ぶりの日本一を果たした。

 ◆原氏とゴルフ ベストスコアは66。ハンデは0もしくは1で「球界NO1の腕前」といっても過言ではない。04年には相模原GCのクラブチャンピオンにも輝いた。1995年の現役引退時には50歳になった自分を「全米シニアツアーに出て、(故グレッグ・)ノーマン(オーストラリア)らと戦っている」と思い描いていたほどだ。

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