フジサンケイクラシック最終日をプレーした大西魁斗
◆男子プロゴルフツアー フジサンケイクラシック 最終日（４日、山梨・富士桜ＣＣ＝７５４１ヤード、パー７１）
プロ２年目で米国で腕を磨いてきた“逆輸入プロゴルファー”大西魁斗（２３）＝ＺＯＺＯ＝が、悲願のツアー初優勝を飾った。３打差３位で出て、得意のドライバーとパターで攻めて６バーディー、３ボギーの６８。通算１１アンダーで並んだ朴相賢（パク・サンヒョン、３９）＝韓国＝とのプレーオフ（ＰＯ）を１ホール目で制した。１２月のメジャー、日本シリーズＪＴカップ（１日開幕・東京よみうりＣＣ＝報知新聞社主催）初出場権も獲得。海外志向の強い１９９８年度生まれの“黄金世代”は今秋、欧米ツアー予選会挑戦も表明した。
富士山の麓で、世界を志す２３歳のニューヒーローが誕生した。自身初のＰＯ１ホール目。大西は冷静に、２メートルのスライスラインのバーディーパットを沈め、勝利を決めた。「カモン！」。拍手の中、絶叫しながら右拳を振り下ろした。
９８年度生まれ“黄金世代”では男子３人目の優勝。「まだ夢の世界にいるよう。本当に難しくて、総合的に良くないと優勝できない。家族と離れて、一人で米国に行って苦しい思いもしましたが、米国の難しいコースを経験してきたので勝てました」と目を潤ませた。
今季は２度の２位（５、６月）。３打を追ったこの日は「よりアグレッシブに。思い切り振り抜こう」と１番から得意のドライバーを積極的に握って首位を追った。２打差で後半に入ると１４番で１・５メートル、１５番で３０センチ、１６番で８メートルを沈めて３連続バーディーで首位の朴に並んだ。１８番で３つ目のボギーをたたき、１差リードされて待つ立場となったが、安定感を誇ってきた朴もボギーで続きＰＯのチャンスをつかんだ。
海外メジャー２冠のコリン・モリカワ（米国）ともしのぎを削った大学時代、得意のショットが不調に陥った。１９年から日米ツアー１３勝の丸山茂樹（５２）も指導する内藤雄士コーチ（５２）に師事。「ショットが真っすぐいかなくなった、と一からつくり直しました。良くしていったら似ていった」とコーチはスイング改造を説明。首を横に傾ける独特のスイングから“和製ホアキン・ニーマン”と呼ばれている。また、４０インチの中尺パターを操り、今季平均パットは１・６９３７でツアー１位。トップ１０入りも最多８回と抜群の安定感を誇る。
石川遼、松山英樹と今大会覇者はその後、米男子ツアーへと飛躍。今季賞金ランクは３位に浮上し今秋に欧州ＤＰツアー、米下部ツアーの予選会に挑戦する予定だ。「どんな道になるかは分からないですが米ツアーで優勝したい」。確かな自信を胸に世界舞台に挑む。（榎本 友一）
大西 魁斗（おおにし・かいと）
▽生まれとサイズ １９９８年１０月１３日、千葉県生まれで愛知県育ち。２３歳。１７７センチ、７４キロ。
▽ゴルフ歴 ５歳で祖父と母の影響でゴルフを始め、９歳で語学力とゴルフの練習環境を求めて渡米。１３歳から５年間、米ＩＭＧアカデミー入り。毎朝５時起きで練習に没頭。同期にテニスの西岡良仁（２６）らがいた。南カリフォルニア大２年時に「オールアメリカン」のメンバーに選出。昨年５月に日本でプロ転向。
▽文武両道 日本語と英語が堪能なバイリンガルで、南カリフォルニア大ではビジネス学部で学び、ＭＢＡも取得。成績も優秀で２０年には「学部長表彰」も受けた。
▽丸山茂樹 長男・奨王（ショーン、２２）と拠点の米ロサンゼルスで練習をよくともにしてきた。丸山からアプローチの指導も受け「今大会のグリーン周りで生きました」と感謝した。
▽家族 父・泰斗さんはＮＨＫ「ラジオ英会話」などで講師を務める。母・泉さん、姉。