プレーオフを制して３年ぶりの優勝を決めた石川遼は、ギャラリーの拍手に帽子を振って応えた（カメラ・今西 淳）
◆男子プロゴルフツアー 三井住友ＶＩＳＡ太平洋マスターズ 最終日（１３日、静岡・太平洋Ｃ御殿場Ｃ＝７２６２ヤード、パー７０）
３打差２位で出た石川遼（３１）＝カシオ＝が５バーディー、２ボギー、１ダブルボギーの６９で回り、通算８アンダーで並んだ星野陸也（２６）＝興和＝との雨中のプレーオフを２ホール目で制して２０１９年日本シリーズＪＴカップ（東京よみうりＣＣ＝報知新聞社主催）以来、３年ぶりとなるツアー通算１８勝目を挙げた。１０、１２年に優勝している得意コースに短髪の新スタイルで臨み３０代初勝利。ツアー初の１０、２０、３０代の「３世代Ｖ」を飾り、２年ぶり１３度目の日本シリーズ切符（１２月１日開幕）も手にした。
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５月に千葉で開催された全米オープン予選に行った。石川を取材するためだ。といっても、私が石川と顔を合わせるのは２０２０年１２月の日本シリーズＪＴカップ以来のことだった。予選は３６ホールの長丁場。１８ホール終了時点で、石川は下位に沈んでいた。
寂しい気持ちでクラブハウスの階段を上がっていたら、偶然にも残り１８ホールに向かう石川とすれ違った。「お久しぶりです。今、何担当でしたっけ？ ＵＳＧＡ（全米オープンを主催する全米ゴルフ協会）だっけ？」。ジョークでお出迎え。明るい表情に驚いた。
石川は２０２０年春からスイング改造に取り組んでいる。毎試合後の記事を読みながら「大丈夫なのか」と不安しかなかった。予選会後、２人で話す機会があった。「いつ頃までに勝ち負けにもっていきたいのか」。率直に聞いた。「ぶっちゃけ、秋までにはと思っている」と返ってきた。真っ先に浮かんだのが、得意大会のこの三井住友ＶＩＳＡ太平洋マスターズだった。
プロは結果が優先される世界だ。世間の批判的な声も自然と聞こえてくる。その過程での取り組みは、苦しみを伴うことも多い。ただ、今はそれが必要な時期。「心配かけてすみません。大丈夫ですから」と、あの時石川は言った。この先に、まだ強くなれる自分がいる。信念を貫きながら、明るい未来へと進む。（０９～１４年ゴルフ担当・高木 恵）