イ・ボミ「18番ずっと忘れない」 涙でスタートも13年間ホールアウトは笑顔で「私の心は今すごく幸せ」


9番、ティーショットを放つイ・ボミ(カメラ・馬場 秀則)

9番、ティーショットを放つイ・ボミ(カメラ・馬場 秀則)

◆女子プロゴルフツアー ▽NOBUTA GROUPマスターズGCレディース 第2日(20日、兵庫・マスターズGC=6495ヤード、パー72)

 2015、16年賞金女王で、通算21勝の韓国出身、イ・ボミ(35)=延田グループ=が、13年間プレーした日本ツアーに幕を下ろした。107位で出て2バーディー、2ボギーの72で回り、通算11オーバーの99位で予選落ち。スタート前には涙も見せたツアー屈指の人気者は、「私の心は幸せ」と最後はトレードマークの笑顔で日本のファンにお別れした。7アンダー65で回った菅沼菜々(23)=あいおいニッセイ同和損保=が、2位と1打差の単独首位に立った。

 最後はボミらしい最高のスマイルで別れを告げた。最終18番、1打目をフェアウェーに運び、2打目に向かう途中に一度、深呼吸をした。「18番のプレーはずっと忘れない」。雨が降る中、涙を浮かべた選手やファンが周囲で待つグリーンでは、パーパットを沈めると白い歯を見せ、両手を上げて拍手に応えた。「本当に幸せだった。いいゴルフができ、明日もプレーしたいと思った」。一生の思い出に残るフィナーレだった。

 スタートは涙だった。「最初に会ったのは7歳くらいで今は中学生」というファンと目が合うと「やめることが悲しいのか泣いていて、私も」と早くも涙腺が決壊した。その後は、イメージカラーのピンク色のシャツなどを着た観客に後押しされ、2番パー4では今大会初バーディー。予選通過が難しい状況でも声援を送ってくれる人々の思いに必死に応え、イーブンパーでホールアウトした。「こういう環境で回ることはもうないと思ったので、皆さんの顔を一人ずつ見ながら(回った)」。ファンを愛し、愛された13年間。「スマイル・キャンディ」の人柄を象徴する日本最後のラウンドだった。

 会場には夫で俳優のイ・ワンさんや母・ファジャさんら家族の姿もあった。「昨日、私の(特設)ブースを見たんですけどホールインワンの文字があった。そのホールインワンをしたのは、お父さんが亡くなった週でした」。14年9月、連覇がかかった大会の3日目に、病気療養中だった父・ソクジュさんの容体が急変。「試合の途中で帰ったことを思い出した。今は『お疲れさま』って言ってくれていると思う」。翌年、父との約束だった賞金女王にも輝き、「感謝しています」と声を震わせた。

 試合後のサプライズセレモニーには、有志で集まった選手から祝福を受けた。黄金期を支え、この日もコンビを組んだ清水重憲キャディーとも号泣ハグ。「(引退発表後は)日曜日まで上位で回っているのを想像していた。結果は違ったけど、私の心は今すごく幸せ。ゴルフの試合が恋しくなりそう」。ボミは第二の人生も、笑顔で歩み始める。(瀬川 楓花)

 ◆イ・ボミ 1988年8月21日、韓国・水原市生まれ。35歳。12歳でゴルフを始め、2007年にプロ転向。10年に3勝して韓国ツアーの賞金女王となり、翌11年から日本ツアーに参戦。12年LPGAツアー選手権リコー杯などメジャー2勝を含む通算21勝。15、16年に2年連続で賞金女王に輝いた。愛称は「スマイル・キャンディ」。158センチ、56キロ。家族は夫。

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