◆報知新聞社後援 女子プロゴルフツアー メジャー最終戦 JLPGAツアー選手権リコー杯 最終日(26日、宮崎・宮崎CC=6497ヤード、パー72)
山下美夢有(みゆう、22)=加賀電子=が2打差首位から4バーディー、2ボギーの70で回り、通算10アンダーで逃げ切って2位に3打差の完勝。大会4人目の連覇で1988年のツアー制施行後、6人目&最年少での2年連続女王を手にし、「山下時代」の到来を印象づけた。ともに史上初の2年連続賞金2億円突破&平均ストローク60台で、ド派手に締めくくった。来季は、海外メジャーでの活躍と出場圏内にいるパリ五輪出場を目標に掲げた。母・有貴さん(47)が2年連続女王に輝いた美夢有の素顔を語った。
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最終日から応援に駆けつけた母・有貴さんは優勝で女王が決まると涙した。「本当に良かったです」と祝福する関係者らに感謝した。
今月上旬、しばらくパットが入らなくなった山下に心配した母が語りかけた。「ゴルフのことは分からんけど、最近パター打つときガチガチに見えるねん。あれだけ入らないと笑えてくる」。すかさず「私は笑えん」と返されたが「全部頑張らなきゃとなったら、しんどいよ。割り切るのも大事」と諭した。母のおかげで「ちょっと気が楽になった」と終盤戦の重圧が少し軽くなったという。
優勝した試合の帰りの車でも父・勝臣(まさおみ)さん(48)と娘は常に「あのホールが…」と反省会。そんな姿に「もうええやんって言うから、ママは“悪友”って言われています」と苦笑する。関西の自宅で過ごす月曜日はゴルフクラブを握らない。友達とご飯や買い物に行き、次の試合に向けて気持ちを切り替える。「リラックスする時間がなくなるのは良くないから」
幼少時はフィギュアスケート、クラシックバレエを習った。体のバランスを取るため「姿勢が良くなる。体幹を鍛えられる」と今の安定性にもつながっているようだと語る。今年1月に行った韓国旅行でも「普通にスケートを滑っていた」と母を驚かせた。昔から「(身長が)小さいからその分、鍛えなあかん」と、1歳下の弟と近所の山を駆け上がり、丈夫な下半身をつくり上げた。
小学校の授業参観では、母の前で作文を読み上げた。「将来は全米(女子オープン)で優勝したい」。だが「あの子、読む時につっかえて、後でどうしたの?と聞くと全米を『金米』と書いていたんです」と懐かしそうに振り返った。その後、スタジオアリス女子オープンのジュニア大会で2度優勝。当時もらった金田久美子らのサインを今も大切に取ってある。
今年は海外メジャー3試合で思うような結果を残せなかった。「体や飛距離も違うけど、勉強になることがいっぱいあります」と母。お米、肉が大好きで、パンが中心の海外では食事が合わず、帰国後に体調も崩した。本人は家族に「スポット(参戦)で頑張る」と明かしている。有貴さんは「今年よりも来年は(海外で)いい成績で、という気持ちだと思います」と優しいまなざしで語った。(岩原 正幸)
◆コーチの父労い「よく頑張った」 〇…コーチで父の勝臣さんはめったに娘を褒めないが、「よく頑張った」とねぎらった。「反省しかない」と言うが、「ショットの精度は去年より上がっている」。平均パット数1位(1・7256)には「ショットが寄っただけ」と冷静に分析。5歳から娘を教え、今大会は試合2日前から見守った。「オレは(自営業の)仕事をせな。ここ(会場)に来ている場合じゃない」とこぼすが、ボヤキの中には深い愛情がある。