蝉川“泰果チャージ”9バーディーで2差2位浮上!!22歳虎党が羽川豊超え最年少「アレ」へ挑む


8番、ティーショットを放つ蝉川(カメラ・今西  淳)

8番、ティーショットを放つ蝉川(カメラ・今西 淳)

◆報知新聞社主催 男子プロゴルフツアー メジャー最終戦 日本シリーズJTカップ 第2日(1日、東京よみうりCC=7023ヤード、パー70)

 首位と4打差の7位から出た蝉川泰果(たいが、22)=フリー=が、9バーディー、1ボギー、1ダブルボギーで、通算9アンダーとし、この日のベストスコア64をマーク。通算11アンダーで首位をキープした同学年の賞金王・中島啓太(23)=フリー=に2打差2位に迫った。この日、今年の新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれた阪神・岡田彰布監督の「アレ(A.R.E.)」(優勝)を胸に、虎党を自負する22歳の“和製タイガー”が、81年大会の羽川豊の最年少V記録(23歳363日)更新に挑む。

 気温8・3度。前日から6度も下がり、冷え込んだ東京よみうりCCで、蝉川が熱い戦いを見せた。持ち味の攻撃的なゴルフで7位から2位に一気に浮上。序盤に2つスコアを落としながら、そこから8バーディーを量産して一気に盛り返し、「(自分のプレー)らしくなってきたと思いますね」と腕をまくった。

 最終組に入った初日は、賞金王・中島や金谷拓実(25)=Yogibo=とは対照的に1人伸び悩んだ。この日も3番で1メートル弱のパーパットをカップにはじかれると、4番(パー4)は、右ラフからの2打目が木に当たるトラブルに遭いダブルボギー。それでも「集中力を切らさずにやった結果、その後バーディが続いてくれた」。2オンに成功した6番(パー5)から3連続でチャンスを生かすと、14番から、2・5メートルのイーグルトライを外した17番(パー5)までプロ転向後初となる4連続バーディー。窮地から一転、猛チャージでトップとの差をグイと詰めた。

 独走態勢に入りかけた首位の中島に2差でピタリ追走。3日目は再び中島、金谷との賞金ランク上位3人の最終組に戻った。ちなみに、中島は熱烈な巨人ファンで金谷は広島ファン、蝉川は虎党。「(2人とも)自分より上の次元にいる。昨日もすごい勉強になった。最終組に戻れてうれしい」と喜んだ。

 今年1月の関西空港。初戦の米男子ツアー、ソニー・オープン(ハワイ)への出発前に蝉川は「賞金王になりたい」と決意し、大荷物を抱えて出国した。1年を通してほぼ上位で戦い、前週のカシオワールドオープン最終日は賞金王の可能性に懸け逆転優勝を狙ったが、伸ばしきれず10位終戦。「自分の場合、(順位の)ボードを見すぎた時に良くない傾向がある」と猛省。今大会は「自分のプレーを心がけよう」と胸に刻んだ。

 賞金ランク3位で終えれば来季欧州ツアーの出場権を得られるが「とにかくこの試合でどれだけ(力を)出せるか」と意識はしない。「自分に足りないものを持っている2人なので、明日また新しく発見できることもあると思う。どんどん吸収して、上の次元に行きたい」

 虎党ゴルファーが最年少22歳で日本シリーズ初制覇へ―。そんな状況下で周囲の期待は「アレ」との“コラボV”。だが本人は自然体のようで「アレを目指すか」と質問されても「え? 分かんないです」。謙虚に、進化を止めなかった先にツアー4度目の「アレ」が待つ。(瀬川 楓花)

 ◆蝉川にかかる記録

 ▽大会最年少優勝 今大会で勝つと22歳326日で、1981年の羽川豊(23歳363日)の記録を更新。

 ▽73年のツアー制施行後最年少でのメジャー2冠 22年の日本オープンを制しており、22歳326日でメジャー2勝目となれば、81年の羽川豊(日本オープン&日本シリーズ、23歳363日)の記録を抜く。

 ◆蝉川 泰果(せみかわ・たいが)2001年1月11日、兵庫・加東市生まれ。22歳。1歳からプラスチック製クラブでゴルフを始め、大阪・興国高2年時に関西ジュニア、3年時に国体優勝。22年度アマチュア日本代表。東北福祉大4年時の22年9月のパナソニックオープンで初優勝し、同10月の日本オープンで史上初のアマ2勝目。同11月にプロデビュー。175センチ、77キロ。家族は両親と姉。

 【ちょっといい話】

 18ホールを歩いて見守った父・佳明さんは、普段から息子にゴルフはエンターテインメントだと教えている。「お客さんが見てくれるから成り立つ。試合の途中でお父さんが亡くなったと連絡が来ても、1人でもお前を見ようと来てくれた人がいたら、絶対帰ってきたらいけない」。10月に千葉で開催された米ツアー、ZOZOチャンピオンシップの最終日。サインを求めるギャラリーに囲まれた。蝉川は、先に子どもにサインし「アテストしないといけないので、また戻ってきます」と、その後に1時間半かけて全員に対応。この日も、ボギー、ダブルボギー後に2度の連続バーディーでギャラリーを沸かせたのは、蝉川のエンターテイナーとしての意地でもあった。(楓)

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