TBS解説者の芹澤信雄プロが大会総括 2度目優勝の「シェフラー時代到来」38位松山英樹は「歯車が狂って」いた


◆米男子プロゴルフツアー メジャー初戦 マスターズ 最終日(14日、米ジョージア州オーガスタ・ナショナルGC=7555ヤード、パー72)

 【オーガスタ(米ジョージア州)14日】最終ラウンドが行われ、1打差の首位で出た2022年大会覇者で世界ランク1位のスコッティ・シェフラー(米国)が7バーディー、3ボギーのベストスコア68で回り、4打差をつけて通算11アンダーで2年ぶり大会2勝目を飾った。今季3勝目でツアー通算9勝目。

 69で回った初出場のルドビグ・オーベリ(スウェーデン)が、7アンダーの2位。メジャー2勝のコリン・モリカワ(米国)は74で、73のマックス・ホーマ(米国)、69のトミー・フリートウッド(英国)とともに4アンダーの3位に入った。

 28位から出た松山英樹(LEXUS)は1バーディー、3ボギーの74で回り、7オーバーの38位だった。歴代2位の大会5勝のタイガー・ウッズ(米国)は大会通算100ラウンド目の節目となったが77と崩れ、16オーバー、予選通過者の中では最下位となる60位で終えた。

 国内男子ツアー5勝で、シニアツアー1勝でTBSのマスターズ中継解説者の芹澤信雄プロ(64)は今大会を総括した。38位に終わった松山は「何か1つ歯車が狂って」いた。優勝したシェフラーは「時代到来」と絶賛した。

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 最終ラウンドの松山選手は、世界屈指の精度を誇るショットが曲がり、今大会で一番苦労した一日となりましたね。本人の言葉を聞く限りでは、朝の練習場ではすごくいいイメージだったようですが、コースに出てから何か1つ歯車が狂ってしまい、ティーショットで左右に曲がるミスが続きました。

 序盤から、パットがショートする場面も多く見られました。前日の硬く速くなっていた状態から、少しスピードが遅くなっていたグリーンへのアジャストに戸惑っていましたね。当然、疲労もあったと思いますし、目標を立てにくい順位で、モチベーション的にも難しかったんじゃないかと推測します。

 今季は2月のジェネシス招待での優勝など好調で、松山選手の中できっと手応えを持って臨んでいたと思います。日本のファンからの期待も高く、初日はそれに応えようとしてアドレナリンが出過ぎてしまって、空回りを生んでしまったようにも見えました。

 練習場の姿を見ている限り、かみ合えばいけそうな雰囲気はかなりありました。「たら」、「れば」は禁物ですが、第1ラウンドの2~4番のバーディーパットを沈めていたら優勝争いに絡んでいたんじゃないかと思います。初日に出遅れてしまうと、今年のような難しい条件では、巻き返すのは厳しい。21年大会のように3メートル以内は外さないパットの安定感は、オーガスタで勝つためには必要になります。

 2021年に松山選手が勝って以降、3年連続でオーガスタナショナルGCはコースを延長しました。近年、飛距離の飛ぶ選手が増えた影響で、全長は過去最長を更新し続けています。今大会の予選ラウンドは向かい風が強く、飛距離の面でも松山選手は苦労していたように見えましたね。それでも、コースを熟知したアプローチや精度の高いアイアンショットは健在でした。来年以降も体とパットの状態を整えて臨んでもらえれば2度目の優勝の可能性は、十分にあると思いますね。

 タイガーは暴風が吹いた今大会第2日に23ホールを回った疲労からか、決勝ラウンド2日間は82、77と苦しみました。とはいえ、明らかに足を引きずっていた昨年とは違って普通な感じでした。復帰戦で、48歳が今年初めて試合で4日間回ったことを考えれば、物すごいですよ。あの難しかった予選2日間を1オーバーの22位で終えていたわけですから。

 最終日は、マスターズ通算100ラウンド目の節目でした。飛距離が落ちたりして良いスコアではありませんでしたが、パトロン(観客)からのスタンディングオベーション(拍手喝采)は、鳴り止みませんでした。やはり一人、役者が違います。パワーも戻ってきていますし、マスターズは唯一、毎年同じコースで開かれるメジャー。来年に向けて体力的な部分が整えば、隅々まで熟知したコースでの大会最多6勝目も期待できますね。

 優勝争いも、非常に見応えがありましたね。勝負を分けたのは、「神様に祈るほど難しい」と言われる11~13番の「アーメンコーナー」でした。単独首位のシェフラーを追いかけていた、モリカワは11番パー4で、第2打を左の池に入れてダブルボギー。ホーマも12番パー3の第1打をグリーン奥の茂みに打ち込み、アンプレアブル(プレー不能)でダブルボギー。初メジャーで怖い物知らずの快進撃を続けていたオーベリも、11番の第2打がグリーン左の池につかまり、ダブルボギーをたたいた。優勝を争うサンデーバックナインでのダブルボギーは、致命傷でした。

 一方で、世界ランク1位のシェフラーはさすが。11番こそ2メートルのパーパットを外してボギーでしたが、13番は2オンに成功してバーディー。重圧がかかり、風の読みも難しい3ホールをしっかりパープレーで耐えて、精神的な強さも感じさせました。身長190センチと大柄で飛距離も出せて、アイアンもパターもうまい。2年前の優勝時よりも攻守のマネジメントも徹底していて、ちょっと手のつけようのない強い勝ち方でしたね。「シェフラー時代到来」と言っても過言ではないかもしれません。それくらい見事な優勝でした。(プロゴルファー)

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