女子プロゴルフで国内通算14勝の有村智恵が7日までにスポーツ報知の取材に応じ、日本時間同日午後4時に開幕するパリ五輪女子ゴルフの展望を語った。日本からは6月のメジャー、全米女子オープンで優勝した笹生優花(アース製薬)、2年連続日本ツアー年間女王の山下美夢有(みゆう、加賀電子)が出場。それぞれの特徴や、海外勢の有力選手などを分析した。
笹生はフィリピン代表だった2021年の東京大会に続き、2大会連続の五輪。全米女子オープンで日本勢初のメジャー2勝目を飾り、一気に日本代表入りを確実なものとした。2年間ツアー優勝から遠ざかっていたが、持ち前の飛距離にパットもさえて最高峰のメジャーを制して波に乗る。米女子ツアー参戦経験のある有村は「なかなか優勝できなくて、ブランクが少しできてしまい、彼女なりにやっぱり苦しい時間を過ごしたのかな、と思う。その中で一つ殻を破ったというか、自分のゴルフに集中することに気付いて、自信も得ている。今は本当にすごく強い状態でパリオリンピックを迎えられると思うので、楽しみ」とメダル獲得に大きな期待を寄せた。
山下は代表決定前最終戦の6月の全米女子プロ選手権で、メジャー自己最高の2位。同大会前は日本勢4番手と代表圏外だったが、逆転で2番手に滑り込んで五輪の切符をつかみ取った。有村は「(主戦場が)海外の選手の方が優勢かなと思っていたが、絶対に結果を残さなければいけない中で2位という、すごい成績で決めるのが彼女の勝負強さ。期待度を上げてくれた」と大舞台での勝負強さに舌を巻いた。
「金メダル最有力」と優勝候補筆頭に挙げられるのは、世界ランク1位のネリー・コルダ(米国)だ。今季は出場5試合連続を含む6勝をマーク。パリでは東京五輪に続く2連覇に挑む。「これだけの無双状態で来て、しかも前回(東京大会)でも金メダルですから、一番の注目選手だと思います」と有村さんも本命視している。
とはいえ、混戦模様を予想する。「前回の銅メダリストのニュージーランドのリディア(・コ)とか、ネリー以外だと、アメリカの代表選手は(リリア・ブ、チャンと21年東京五輪とは)ガラッと変わった。中国や韓国もかなり代表のメンツが変わったと思う。その辺がどんな感じなのかな」と、思わぬ伏兵や若手のメダル獲得の可能性も十分あると見ている。
かつて米ツアーでしのぎを削った、韓国のライバルの活躍も心待ちにしている。「(35歳の)韓国の梁熈英(ヤン・ヒヨン)は同世代で。土壇場で、全米女子プロ選手権でメジャー初優勝して代表入りするっていうすごいストーリーで。同世代で五輪に出ている選手も少ないので、すごく頑張って欲しいですね」と注目選手に推した。
開催コースの「ゴルフナショナル」は、起伏のあるフェアウェーに傾斜のきついグリーン。さらに、無数のバンカーと池や小川も備えた多様なショットが要求される難コースとなっている。ショットの精度からパットまで総合力が試されるセッティングとなりそうだ。同じ会場で開催された23年のフランス・オープンでは久常涼が日本人3人目の欧州ツアー制覇を飾っている。
笹生、山下も初めてプレーするコースとなる。有村は「笹生さんも山下さんも十分、どんなコースでも対応できると思う。いい色のメダルを持って帰って来てもらいたいですね」と、東京五輪銀メダルの稲見萌寧に続く日本勢2大会連続表彰台に熱い期待を込めた。
◆有村 智恵(ありむら・ちえ)1987年11月22日、熊本市生まれ。36歳。父の勧めで10歳からゴルフを始める。宮城・東北高卒業後の2006年プロテストでトップ合格。08年プロミスレディスで初優勝。11年スタンレーレディス第1ラウンドでは、アルバトロスとホールインワン。09、11、12年に自己最高の賞金ランク3位。国内女子ツアー通算14勝。13~16年途中までは米国でプレー。21年12月に一般男性と結婚。24年4月に第1、2子となる双子の男児を出産。159センチ。
◆五輪のゴルフ競技 1900年パリ、04年セントルイス大会で開催。以降は除外され、2016年リオ五輪で112年ぶりに正式種目に復帰。今夏のパリ五輪は男女各60選手が出場し、「ゴルフナショナル」で72ホールのストロークプレーで個人戦のみ開催。リオ大会で初出場の日本女子は野村敏京が4位、大山志保は42位。朴仁妃(韓国)が金メダルだった。21年東京五輪は稲見萌寧が日本人初の表彰台となる銀メダル、畑岡奈紗が9位。当時、世界ランク1位のネリー・コルダ(米国)が金メダルに輝いた。
◆ゴルフナショナル パリ南西のベルサイユ宮殿に近接する広大で平らな更地を、最高級のトーナメントを開催することを目的に設計され、1990年にオープン。2016年に全面改修され、18年には欧州ツアーと米ツアーの対抗戦「ライダー・カップ」が開催された。パリ五輪女子は8月7日から4日間行われる。