◆男子プロゴルフツアー Sansan・KBCオーガスタ 最終日(25日、福岡・芥屋GC=7274ヤード、パー72)
単独首位で出た香妻陣一朗(30)=国際スポーツ振興協会=が5バーディー、2ボギーの69で回り、通算19アンダーで並んだ小斉平優和(26)=太平洋クラブ=とのプレーオフを制して優勝した。22年4月の東建ホームメイトカップ以来の通算3勝目。今季主戦場「LIV(リブ)ゴルフ」で年間ポイントランク45位で来季出場権獲得には、9月の最終戦(米イリノイ州シカゴ)で優勝に近い成績を残すしかない崖っぷちの状況の中、家族の前で26年までの国内2年シードをつかみ取った。
家族の涙とギャラリーの歓声があった。香妻は過去の2勝とは違う喜びに、存分に浸った。2年ぶりの勝利は初の有観客試合。「家族の前で優勝するのが夢だった。もっときれいな勝ち方をしたかったので、うれしさ半分、悔しさ半分」。終盤の失速でプレーオフにもつれた試合展開には苦笑いだったが、妻でモデルの武井玲奈さん(29)と、昨年5月に誕生した長男に届けた3勝目だった。
3差で後半に入った独走ムードが一変した。17番パー3で第1打をグリーン右手前のバンカーに入れてボギー。最終18番も第1打が右バンカーに捕まり、1メートル半のパーパットを外した。「3ホール全部パーで優勝できると思ったけど、16番のバーディーで守りに入った。メンタルの弱さと技術力のなさが出た」と反省した。
今季は世界の強豪が集う超高額賞金ツアー「LIVゴルフ」を主戦場にする。昨年12月の予選会を勝ち抜き、日本人で初となる本格参戦を果たした。今季12戦して個人戦最高は9位。既に日本円で約3億円近い賞金を稼ぐ。前週まで米国で戦い、今大会開幕2日前の夜に帰国したばかりだった。「毎日夜中の1時に目が覚める」と時差ぼけに苦しみながら、好スコアを並べた。
異国でラーム(スペイン)やケプカ(米国)らメジャー王者と宿舎や食事などを共にする経験も生きた。「トップ選手のプレーを間近で見られる。私生活から一緒。勉強になるし、レベルアップにつながっている」と刺激的な日常を振り返った。
愛称は「ジーニー」。次週の日本ツアーに出場後、来季出場権確保に向けてLIVの今季最終戦へと渡米する。「日本ツアーに帰ってきたら優勝するようじゃないと、LIVでは戦えない」とプライドをのぞかせた。国内12の義務試合数はクリアできそうにないため「シードを確保するには優勝しかない」と覚悟。国内今季4戦目での有言実行の勝利で、25年の職場をまずは確保した。(高木 恵)
◆香妻 陣一朗(こうづま・じんいちろう)1994年7月7日、鹿児島・鹿屋市生まれ。30歳。2歳からゴルフを始め、横峯さくらの父・良郎氏主宰の「めだかクラブ」出身。宮崎・日章学園高3年時の12年11月にプロ入り。16年に初シード。20年三井住友VISA太平洋マスターズで初V。昨年は賞金ランク45位。国内生涯獲得賞金は約2億6540万円。姉はツアー1勝の琴乃(32)。165センチ、71キロ。妻はモデルの武井玲奈さん(29)で昨年5月に長男が誕生。