◆報知新聞社主催 男子プロゴルフツアー メジャー最終戦 日本シリーズJTカップ 第2日(29日、東京よみうりCC=7002ヤード、パー70)
12位から出た賞金ランク4位の岩田寛(43)=フリー=が5バーディー、2ボギーの67で通算3アンダーに伸ばし、トップと6打差の7位に浮上した。最難関の18番パー3で、この日唯一のバーディーを奪い、連続バーディー締め。逆転賞金王には優勝が必要で、43歳305日で初タイトル獲得なら、12年・藤田寛之の43歳169日を抜き、史上最年長記録となる。
物静かな男がパターを持った手を高く上げ、歓声に応えた。岩田は最終18番、グリーン上で神経を研ぎ澄ませた。カップまで8メートル。狙いを定め、下りのスライスラインをねじ込むと表情を変えずに喜びを表現した。「入っちゃったという感じ。たまたま」。謙遜しながら振り返った。この2日間の18番の難易度は3・30000で18ホール中1位。初日は2人だけ、この日は唯一のバーディーですり鉢状のグリーンを囲んだ観衆を沸かせた。
12位から出て、グリーンを外した2、3番とまさかの連続ボギー。「イライラしていたけど、ショット、パットに影響するので、なるべく感情的にならないように」と気持ちを立て直し、4番でバンカーからの第3打をカップに入れ初バーディー。5番も取ると、6番パー5で80センチに2オンさせ、イーグル逃しのバーディーを奪った。「そこだけ(3連続)は良かった」と、またしても静かに言った。上がり2連続バーディーで締めくくり、6差7位と逆転チャンスも出てきた。
前週のカシオワールドオープンで6月以来の今季2勝目を挙げ、賞金ランク4位に浮上。2週連続優勝で初の戴冠となれば、12年・藤田寛之の43歳169日を抜き、43歳305日の史上最年長記録だ。初日は不調気味だった賞金王争いのライバルたちも続々とスコアを伸ばす。賞金王への欲は「不思議とないですね」と言うが「みんなでそうやって(上位で)やった方が盛り上がる」と物静かに歓迎した。
日本シリーズは9度目の出場で2度の2位(20、22年)が最高。「一度も攻略したことない。タッチが合わせづらい」と毎度のように、グリーンにてこずっており「調整しても、次の日になったらうまくいかない。泣きそうです」と嘆くが、いつも満足しないのが“ヒロシ流”だ。賞金ランク3位以上なら欧州ツアー切符も手に入る。これには「もし入ったら、行きたい国しか行かない。スイス、スペインに行ってみたい」。欲があるのかないのか。つかみどころのない男が、逆転賞金王をつかみにいく。(岩原 正幸)
◆東京よみうりCC名物の18番パー3 224ヤードと距離が長く、奥から手前へのグリーンの急傾斜が最大の特徴。毎年、ツアー屈指の難易度を誇るホールで手前から攻めるのが鉄則だ。ホールインワンは、1998年大会第3日に3ウッドで記録したエドアルド・エレラ(コロンビア)1人だけ。シーズン最終ホールでもあり最終日には、18番グリーンを取り囲むすり鉢状の観客席からは、温かい拍手が選手たちに送られる。
◆岩田 寛(いわた・ひろし)1981年1月31日、仙台市生まれ。43歳。シニア認定プロの父・光男さんの影響で14歳から始める。仙台育英高、東北福祉大出身。04年にプロ転向。06年に賞金ランク62位で初シード。14年フジサンケイクラシックでツアー初優勝。15年に入れ替え戦を経て米ツアーに参戦し、17年に国内復帰。国内通算7勝。177センチ、74キロ。