37歳・穴井詩、POで昭和生まれ対決制し優勝 諦めモードの展開から「まさかのチャンスがきた」


2年ぶり通算6勝目を挙げた穴井詩は、副賞のグランドピアノを触って笑顔を見せた(カメラ・今西 淳)

2年ぶり通算6勝目を挙げた穴井詩は、副賞のグランドピアノを触って笑顔を見せた(カメラ・今西 淳)

◆女子プロゴルフツアー ヤマハレディース 最終日(6日、静岡・葛城GC山名C=6475ヤード、パー72)

 37歳の穴井詩(らら、ゴルフ5)が2年ぶり通算6勝目を挙げた。単独首位から出て3バーディー、1ボギーの70と伸ばし、大会記録を更新する通算13アンダーで並んだ全美貞(ジョン・ミジョン、42)=韓国=とのプレーオフを制した。前週に32歳で初優勝した工藤遥加(加賀電子)に続き、30代日本選手の2週連続Vは9年ぶり。37歳146日での6勝目は歴代年長8位のスロー達成となった。賞金1800万円を獲得し、生涯獲得賞金は6億円を突破した。

 負けを覚悟した終盤にドラマは待っていた。17番で全に追いつかれた直後の最終18番。穴井はパーでフィニッシュし、入れば優勝が決まる全が約80センチのウィニングパットを外した。「まさかのチャンスがきた」と突入したプレーオフ(PO)1ホール目。「腹をくくって決める」と臨んだ約1メートルのバーディーパットを沈め、右拳を2度振った。優勝した23年大会を含め、POはプロ15年で4戦中3戦を制す勝負強さ。「本当にうれしい」と頬が緩んだ。

 最終日は最終組で42歳の全、39歳の藤田さいきと同組。昭和生まれの「大先輩2人」と「いい緊張感で回れた」。マネジメント力が試される難コースで大会記録を1打更新する13アンダー。2年前のヤマハを制した時もプレーオフで「一度やっているので心の余裕はあった」とほほ笑んだ。

 昨季8勝の竹田麗央、山下美夢有、岩井明愛(あきえ)、千怜(ちさと)姉妹ら昨年ポイントランク上位4人が今季は米ツアーへ。新・戦国時代に「今年がチャンス」と野望が芽生えた。最終日は移動の車中で「WANDS」の90年代懐メロを聴いて会場入りした。

 37歳は「筋肉もつきづらくなった」と漏らすが、ツアー屈指の飛ばし屋は健在だ。オフは1か月間の宮崎合宿で体力を強化。今大会中も宿舎で縄跳びを高速で7分間休まず跳んだ。新ドライバーはシャフトの長さを0・75インチ短くし、ロフト角を通常より立てた8度に改造。ボールの初速は秒速70メートルと女子で群を抜き、今季平均飛距離253・2ヤードは全体4位を誇る。

 2年前からは「長くゴルフをやりたい」と30分のヨガを新たに取り入れた。勝城誉伸トレーナー(38)は「背骨の位置など体の状態を整え、可動域も出る」。豪快で高精度のショットを生む体を維持する。

 シーズン最高は23年の2勝、19年のランク7位。「目標は自己ベスト。これからも30代、元気良く頑張る」。ほんわかした言葉には強い決意がにじんだ。(星野 浩司)

 ◆穴井 詩(あない・らら)1987年11月11日、愛知・岡崎市生まれ。37歳。11歳でゴルフを始める。2008年プロテスト合格。12年に46位で初の賞金シード入り後、16年ゴルフ5レディスで初優勝など、13季連続でシードを獲得中。井上陽水の曲をギターで弾く趣味を持つ父・幸二さんが「音楽好きになってほしい」と願い、命名。165センチ、58キロ。家族は両親、兄、姉。

 ◆ヤマハレディースの優勝副賞 ヤマハグランドピアノ「C3X」(税込み286万円)、水上オートバイ「WAVERUNNER FX Cruiser HO」(価格例・約310万円)、電動アシスト自転車「PAS」(約15万円)、スポーツ電動アシスト自転車「YPJ」(価格例・約75万円)が贈呈された。

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