
逆転でツアー初優勝を飾った脇元(カメラ・宮崎 亮太)
◆女子プロゴルフツアー 伊藤園レディス 最終日(16日、千葉・グレートアイランドC=6769ヤード、パー72)
2打差8位から出たプロ8年目の脇元華(28)=GMOインターネットグループ=が涙のツアー初優勝を果たした。8バーディー、1ボギーの65をマークし通算16アンダーで後続を3打差で振り切った。身長が174センチあり、ツアーメンバーの優勝者では歴代2位、日本勢では最長身。腰痛を抱えシード圏外に低迷していたシーズンの終盤に見せた逆転劇で、夢が広がる大きな一歩を踏み出した。今季の初優勝者はツアー史上最多の11人になった。
静かにほほ笑んだ脇元の表情が、突如ゆがんだ。同期の原英莉花が、目を潤ませ駆け寄ってきた時だった。「『本当におめでとう。うれしすぎる』って言ってくれて。そこで『あ、勝ったのかな』って思った」。大勢のプロ仲間からの祝福の言葉を浴びるうちに実感が生まれ、大粒の涙が頬を伝った。
最終日に崩れることが多かった。上位がいる最終組の2つ前でスタートし、リーダーボードを見ずにプレーした。「自分が何位にいるか分からないまま18番まで来た。集中できていた」。前半に4つ伸ばして首位を捉えて折り返すと、13番で5メートルをねじ込み、右拳を握った。16番は残り156ヤードの第2打を6アイアンで3メートルにつけて、決めきり4連続バーディーで突き放した。
今季は腰痛との闘いだった。2度棄権し、今大会前のメルセデスランキングはシード圏外の58位。12月に椎間板ヘルニアの手術を受けるため、痛み止めの薬を服用するなどぎりぎりの中で臨んだ試合だった。体への負担がかかる強度の高い練習も避けてきた。「体がボロボロなのにこうして勝てた。自分が一番ビックリした。まさかだなと」と振り返った。
3年前からオフにプロ野球ソフトバンクの柳田悠岐外野手らの自主トレに参加している。ゴルフと野球に共通する「振る」という動作を追求してのことだった。今年1月。自主トレ初日から柳田の手のひらにはまめがあり、血がグラブににじんでいた。それでもバットを振っていた。「やっぱり一流の人ってこうなんだな」。多くのことを学んだ。
プロテスト18年の合格組は原、渋野日向子、河本結、稲見萌寧ら、そうそうたる顔ぶれがそろう。「メンツが濃ゆい」と表現する同期たちに、一歩近づいた。地元宮崎開催の最終戦、JLPGAツアー選手権リコー杯の2年連続出場が決まった。「勝って戻れることがうれしい。時間はかかったけど、またゴルフと向き合って2勝目、3勝目を挙げていきたい」。プロ8年目。歓喜の輪の中心で、幸福の花が咲き誇った。(高木 恵)
◆今季国内女子ゴルフの初優勝 ツアー史上最多の11人。工藤遥加が3月のアクサレディスを制すると、佐久間朱莉、稲垣那奈子、高野愛姫、入谷響、内田ことこ、荒木優奈、金沢志奈、菅楓華、仲村果乃、脇元が続いた。ヒロイン誕生の背景には昨季のメルセデスランク上位5人のうち、年間女王の竹田麗央ら計16勝を挙げた4人が米ツアーに主戦場を移したことなどが挙げられる。
◆脇元 華(わきもと・はな)
▼生まれ 1997年10月4日。宮崎・小林市
▼学校 宮崎日大高卒
▼ゴルフ歴 8歳の時に父の影響で。「練習場では猫と遊んだり側転をしていたことの方が多かった」
▼プロテスト 2018年7月に3度目の挑戦合格。今大会と同じグレートアイランドCで行われた新人戦は原英莉花に1打差の2位
▼性格 自称「うるさい系でフレンドリー」
▼趣味 映画観賞、カラオケ。HY、AI、絢香をよく歌う
▼好きなプロ野球球団 ソフトバンク
▼親友 金田久美子とはプライベートでも仲良し。22年樋口久子・三菱電機レディスでツアー最長11年189日ぶりの復活優勝を遂げた友人から「華ちゃんもできる。諦めずに腐らずに頑張ろう」と励まされる
▼サイズ 174センチ、64キロ
▼血液 AB型

