「ゴルフするのがつらかった」どん底だった鈴木愛 中嶋常幸の金言で9年ぶりメジャー制覇


優勝した鈴木(中央)は選手たちからフラワーシャワーで祝福された(左から金沢、菅、右から岩井千、岩井明=カメラ・竹松 明季)

優勝した鈴木(中央)は選手たちからフラワーシャワーで祝福された(左から金沢、菅、右から岩井千、岩井明=カメラ・竹松 明季)

◆報知新聞社後援 女子プロゴルフツアー メジャー最終戦 JLPGAツアー選手権リコー杯 最終日(30日、宮崎・宮崎CC=6543ヤード、パー72)

 今季最終戦で、2017、19年賞金女王の鈴木愛(31)=セールスフォース=が2勝目となるツアー通算22勝目を飾った。首位で出て6バーディー、3ボギーの69をマークし、通算9アンダーで並んだ岩井千怜(ちさと、23)=ホンダ=とのプレーオフ(PO)を2ホール目で制した。メジャーは9年ぶり3勝目。史上7人目の永久シードにあと8勝に迫り「35歳までに30勝したい」と宣言。同じ徳島県出身で男子ツアー94勝の尾崎将司(78)に「近づきたい」と飛躍を誓った。

 鈴木は涙を浮かべ、両手を突き上げた。正規の18番でボギーをたたいて突入した岩井千とのPOの2ホール目。80センチのパーパットを決め、メジャー9年ぶり3勝目を手にした。表彰式では出場全選手が見守る中、フラワーシャワーを浴び「やっと終わった。苦手コースでも勝てるんだぞとうれしかった。自信を取り戻せた」と笑顔で目を潤ませた。

 24日の練習ラウンド。偶然、男子ツアー48勝の中嶋常幸(71)と9番グリーンで会った。根が強いティフトン芝のラフからのロフト角が大きいウェッジでアプローチが難しいと相談。すると「ピッチングウェッジで開いて上に向いて打てば簡単だよ」とレジェンドから金言を受け、すぐに実践し、成果は「ラフからアプローチがすごい寄った」。4日間で連続ボギーなしで好スコアにつなげた。

 2度の賞金女王に輝いた鈴木だが、8月末に21勝目を挙げた後、まさかの5戦連続予選落ち。故障も体調不良もなく、ショットが左へ曲がる毎日に「ゴルフするのがつらかった」。落ち込む姿に母・美江さん(54)から「そういう時もある。気にせず頑張ろう」と背中を押された。

 プロ13年目の31歳。毎朝、炭水化物や野菜ジュースを摂取するルーチンを徹底する一方、体の疲労回復は遅い。若手選手ほど飛距離は出ず「年々優勝するのは難しくなってる」と言う。目標の永久シードにあと8勝。「35歳までに30勝が最大の目標。飛距離や技術を最大限発揮できるのは35歳が限界。1年で2勝ずつの計算でギリギリ」。自身で決めたカウントダウンが迫る中、快挙達成へ突き進む。

 計20ホールに及ぶ今季最終戦の激闘を終え「明日から練習せずに休めるのはうれしい。ポケモンのゲームをいっぱいやりたい」とおちゃめに笑った。生涯獲得賞金は11億円を突破し、歴代5位に浮上。同じ徳島県出身で男子ツアー94勝の尾崎の名を挙げ「ジャンボさんに近づきたい」。女子ゴルフ界に君臨する鈴木の野望は尽きない。(星野 浩司)

 ◆鈴木 愛(すずき・あい)1994年5月9日、徳島・三好郡生まれ。31歳。10歳でゴルフを始め、鳥取・倉吉北高2年時に中国女子アマ制覇。2013年にプロ転向。14年の日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯を大会最年少で制しツアー初V。通算22勝。17、19年賞金女王。趣味は料理。155センチ。

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