
2年ぶりの日本シリーズ制覇が懸かる蝉川
国内男子プロゴルフ今季最終戦のメジャー、日本シリーズJTカップは4日から4日間、東京・稲城市の東京よみうりCCで行われる。23年大会覇者の蝉川泰果(24)=アース製薬=が開幕を前に、スポーツ報知のインタビューに応じ「勝ちたい」と宣言。金子駆大(こうた、23)=NTPホールディングス=、大岩龍一(27)=フリー=との三つどもえの賞金王争いへ、尾崎将司の25歳300日を更新する24歳330日での最年少大会2勝と、19年の石川遼以来の年間メジャー2冠で、逆転キングに望みをつなぐ。(聞き手・高木 恵)
蝉川にとって波乱万丈な一年だった。3月に左肋骨(ろっこつ)の疲労骨折が判明した。5月の日本ツアーで復帰。出場4戦目のBMW日本ツアー選手権森ビル杯で史上最年少のメジャー3冠を達成した。
「6月のツアー選手権で優勝できたことは本当にうれしかった。いい準備ができなかった状態で今季のこの成績は、すごくやれている方だと思う」
前週のカシオワールドオープンでも優勝争いに加わるなど、上位フィニッシュを繰り返しながら、シーズン2勝目には届かずにいる。
「チャンスで決めきれない場面が多かった。ラッキーがなくても毎日、伸ばしていけるような、凡ミスのないゴルフを目指してやっていかないといけない。そして自分の持ち味のアグレッシブさを、もっとどんどん出していきたい」
ピンを狙う攻撃的なゴルフは、蝉川の魅力の一つ。
「そこは損なわずにやっていきたい。例えば左ショートサイド(狭いエリア)のピン位置で、1ヤードでも2ヤードでもセンターから左に打てるように。ボギーを怖がらずにというのが最近のテーマ」
名前の泰果の由来はタイガー・ウッズ(米国)。子供の頃から憧れを抱いてきた。
「自分がギャラリーだったらこういうプレーが見ていて楽しいよな、というのは頭にある。タイガー・ウッズ選手がそういう存在。林の中からでも曲げてベタピンにつけるとか、あり得ないプレーが飛び出す。そのあり得なさを追求していきたい」
4年連続4度目の出場となる日本シリーズJTカップは、蝉川にとっても特別な大会だ。
「初めて出た時に他の試合とは違う雰囲気を感じた。毎年出たい。選ばれた選手しか出られない大会っていうのも魅力的だし、そこで勝てたらシーズン最後の締めとしてうれしい。そのシーズンに活躍した選手しか出られない名誉な大会」
23年に22歳326日の大会最年少優勝を飾った。1打リードで迎えた名物ホールの18番パー3。グリーン右手前からのアプローチを40センチにつけ、パーをセーブして混戦に決着をつけた。
「鮮明に覚えている。あのアプローチは完璧だった。30回に1回打てるかどうか。それがあのしびれる場面でピタっといった」
4月の関西オープン以来のシーズン2勝目に、うれし涙を流した。
「なかなか勝てなかったのでこみ上げた。賞金王争いから脱落して迎えた最終戦の最終日最終組で、中島啓太選手と石川遼選手と競り合って勝てたことがうれしかった」
尾崎将司の記録を塗り替える最年少大会2勝と、石川遼以来の同一シーズンメジャー2勝が懸かる一戦。ランク3位からの逆転賞金王へ優勝が最低条件になる。
「勝ちたい。こんなにはっきり言ったのは初めて。勝ちたいがために練習も必死にやっている。2年前に(賞金王レースで)2位で終わり悔しかった。2位は誰からもなかなか覚えられない。賞金王は肩書きとしても記録としても残る。チャンスはあるので狙いたい」
【取材後記】 蝉川は1月から米下部のコーンフェリーツアーで戦ってきたが、2月のコロンビアでの試合で背中に激痛が走り、途中棄権を余儀なくされた。あふれる涙は宿泊先の部屋に戻っても止まらなかった。帰国後の3月に左肋骨の疲労骨折が判明。「頭が真っ白になった」と当時を振り返る。
沈んだ心を明るく包んでくれたのが、昨年11月に結婚した妻・葵さん(28)だった。毎試合ツアーに帯同し、サポートを続けてくれている。「笑っていてくれると安心する。けんかすることも多いけど、言いたいことを言い合えるすごくいい関係。シーズン序盤のつらい時にも本当に支えてくれた」と感謝は尽きない。「僕は結果で恩返しするしかできない。自分の全力のプレーで恩返しをしたい」。最愛の人の存在が原動力になっている。(高木 恵)
◆蝉川 泰果(せみかわ・たいが)2001年1月11日、兵庫・加東市生まれ。24歳。1歳からゴルフを始め、大阪・興国高2年時に関西ジュニア、3年時に国体優勝。22年度アマチュア日本代表。東北福祉大4年時の22年9月のパナソニックオープンで初優勝し、同10月の日本オープンで史上初のアマ2勝目。同11月にプロデビュー。23年の関西オープンでプロ初優勝。175センチ、77キロ。家族は妻・葵さん(28)。

