【JTカップ】先天性心臓病の手術、野球断念しゴルフへ…不屈・細野勇策がレフティー44年ぶりVへ2差2位発進


第1日、紅葉を背に18番でティーショットを放つ細野。5アンダー2位の好スタートを切った(カメラ・今西 淳)

第1日、紅葉を背に18番でティーショットを放つ細野。5アンダー2位の好スタートを切った(カメラ・今西 淳)

◆報知新聞社主催 男子プロゴルフツアー 25年シーズン最終戦 メジャー最終戦 日本シリーズJTカップ 第1日(4日、東京よみうりCC=7002ヤード、パー70)

 プロ転向5年目のレフティー、細野勇策(22)=三共グループ=が7バーディー、1ダブルボギーで5アンダー、65をマークした。首位と2打差の2位と好発進し、左打ち選手が大会を制覇すれば、日本勢では1981年の羽川豊以来44年ぶり2人目。国内メジャー史上でも3人目の快挙となる。23年に22歳326日で制した蝉川泰果(24)=アース製薬=に次ぐ、大会年少2番目の22歳332日でのツアー初優勝を狙う。宋永漢(ソン・ヨンハン、34)=韓国=が、7アンダーの63で単独首位で滑り出した。

 冷たい弱い風の吹く冬晴れの下、名物の難関18番パー3がわき上がった。細野がグリーンのきつい傾斜を読み切った。第1打をピン右6メートルに乗せ、パットは大きく左へ切れる難しいライン。「2メートル以上は右に向いた」とねじ込み、ギャラリーの歓声に左手でガッツポーズを決めた。出場30人で蝉川と2人のみのスーパーバーディー。「寄せて2パットでいければ最高と思ってたので、入った時はすごいうれしかった」とはにかんだ。

 前半の失速からカムバックした。4番はバンカーショットをミスして痛恨のダブルボギー。それでも、14番で1メートルに寄せるなど後半の5バーディーで浮上した。今大会で最も若い22歳のレフティーが好発進。長いシーズンの最終戦で選手の疲労は蓄積するが、「最年少なので、疲れたと言ってられない」と平然と言い切った。

 パットの“師匠”がいる。登録者が42万人を超えるツアー4勝の堀川未来夢(32)のYouTubeチャンネルを見て研究。昨年、韓国でツアー出場時に移動バスの車中で熱中していると、後部座席の堀川から「俺に聞けよ」と突っ込まれた。その後、直接パットを教わり「ラインの読み方を教わった」。詳細は秘密だったが、この日は7バーディーとグリーン上でさえわたった。

 ハンデを乗り越えてきた。山口県で生まれ、先天性の心臓の持病で生後2か月で手術。野球を志したが断念し、6歳からゴルフを始めた。左打ちのジュニア用のクラブが少なく「小学時代は女性用のクラブを使っていた」。コーチの父・誠一さんと二人三脚で腕を磨いた。文字や箸、キックや駅の改札でICカードのタッチも左利き。今季ツアーメンバー200人で唯一、ショットとパットが左打ちの細野は技術も一級品だ。

 今季は出場24試合で予選落ちが1度で「それが目指してるゴルフ」と安定感が光る。9月以降はトップ10入りが4回。9月のロピアフジサンケイクラシックは、首位で出た最終日に16番パー3で悪夢の池ポチャ4連発で「11」をたたき、惜しくも逃した初優勝への思いは誰よりも強い。賞金ランク31位で2年ぶり2回目の出場。今大会でツアー初Vなら9年ぶり5人目だ。「ショットはすごくいいので継続して優勝を目指したい」。歴史的なレフティーVへ若さで挑む。(星野 浩司)

 ◆左打ちの国内メジャー優勝者 1973年のツアー制施行後、81年の日本シリーズJTカップの羽川豊(23)、2015年の日本プロ選手権のアダム・ブランド(32)=オーストラリア=の2人。

 ◆世界の主な左打ち選手 世界最高峰の米男子ツアーでは、2003年にマイク・ウェア(カナダ)がマスターズを左打ち選手で初制覇。フィル・ミケルソン(米国)は04、06、10年とマスターズを3度制し、05、21年全米プロ選手権、13年の全英オープンもV。12、14年のマスターズを勝ったバッバ・ワトソン(米国)らも有名。

 ◆細野 勇策(ほその・ゆうさく)2003年1月9日、山口・小野田市出身。22歳。左利き。名前の由来は「蛮勇と策略」。心臓に先天性の持病があり、生後2か月で手術。父、兄と同じく野球を志したが、断念して父・誠一さんの教えで6歳からゴルフを始める。小学6年時に全国小学校選手権で優勝。18年の全日本アマチュアゴルファーズ選手権優勝。21年にプロテスト合格。22年4月にツアーデビュー。昨年賞金ランクは35位。177センチ、74キロ。家族は両親と兄。

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