一線を退くことを決めた谷口徹は涙、涙…情に厚い喜怒哀楽の人が説く「気合と根性」


上げされる谷口徹

上げされる谷口徹

◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 男子ゴルフの谷口徹が第一線を退くことを決めた。11月のカシオワールドオープン2日目。谷口は18番グリーンで選手ら50人に出迎えられた。情に厚い喜怒哀楽の塊のような人だった。ホールアウト後の取材も涙、涙。その様子を当日、記事にした。翌日の続編に触れたい。

 決勝ラウンドが行われていた土曜日。クラブハウスで昼食中の谷口を見つけた。会釈すると、こちらまで足を運んでくれた。「昨日はありがとうございました。号泣していて何言ったか覚えていないんだけど」。そう言って谷口はまた泣いた。「自分の評価って分からんまんま来たから」。大勢の後輩が花道を作ってくれたことが、心底うれしかったのだろう。

 中継を見ながら谷口の解説を聞くという至福の時間が訪れた。優勝争いをしていた砂川公佑のプレーが映った。「砂川くんはバンカーとクリークはうまいんだけど」。「砂川」を英語化したジョークだった。独演会後は乱入タイムに突入した。「他の選手の取材を聞いてみたい」。報道陣の後方に隠れた。20代のプロたちが、そろって谷口への愛を口にした。ちら見した。やはり泣いていた。

 勝負師らしくコースを去った。「どうしたら優勝できますか?って若い選手からよく聞かれるんです。『気合と根性で上に行け。スコアもスイングも関係ない』って答えるんです。自分、昭和の人間なんでね」とニヤリと笑った。根性論で片付けるのは違う。そうやって20勝を積み上げた小柄な57歳。最後まで勝つことを目指した谷口が言うからこそ、響く。(ゴルフ担当・高木 恵)

 ◆高木 恵(たかぎ・めぐみ) 1998年入社。ゴルフ担当と4度の五輪取材(リオ、平昌、東京、北京)を経て2022年に編集委員。

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