松山英樹選手はマスターズ最終日、2打差3位から優勝を狙いましたが、最終的に7位に終わりました。
松山選手は「予想していた感じではなかった」というコメントを残していますが、この言葉はいったい何を意味するのでしょうか?
優勝は通算5アンダーで5位から逆転したダニー・ウィレット。首位だったジョーダン・スピースは後半で失速、2位でフィニッシュしました。
各選手がどのような心理状況だったかを振り返ってみましょう。
【最終日前半での各選手の心理状況】
■松山選手の心理状況
3日目が終わって3打差の2位、安定したプレーで優勝を強く意識していた。
最終日は前半での好スタートを狙うが、6番が終わって+4。
⇒焦りが出てくる。さらなるチャージをかけようとした。
■ジョーダン・スピースの心理状況
最終日、前半、6番から4連続バーディで2位に5打差をつけて前半終了。
⇒勝利を確信する。
■ダニー・ウィレットの心理状況
最終日のスタート時点、トップのスピースに追いつくのは、-6、-7アンダーが必要で、攻めることを誓う。前半終わって-2
⇒目標に向かって後半も攻める。
【最終日後半、予想と違うゲーム展開に】
■松山選手の場合
フェアウエー(FW)からパーオンしない焦りがあった。
(1番、17番、18番でFWからパーオンならず)
■ジョーダン・スピースの場合
優勝を確信してから失速(10~12番の3ホールで+6)
■ダニー・ウィレットの場合
トップが失速するとは思わなかった(13~16番で-3)
予想の立て方とその後の展開によって、心理的に優位に立てるかどうかが変わってきます。
では、どのように予想を立てればいいのでしょうか?
【予想の立て方】
- 予想
明日ラウンドするコースや競技者を予想し、プランニングを立て、イメージトレーニングを繰り返す。 - 予想ギャップ
予想外のゲーム展開に、対応しなければなりません。一番難しいのは、トップを追っている位置からの序盤でのミスであり、トップとの差が開いた場合です。焦燥感は、プレーリズムの変化を生み、本来のパフォーマンスや集中力を出すことを阻害します。 - 客観視の存在
初期設定(優勝到達スコア)から、もし序盤で離脱してしまった場合は、新しい設定やマインドが必要となります。一番重要なのは、感情から切り離した客観的な視点。上手く行かないときも上手く行っているときも、ただ目の前の一打に最善を尽くして打つことを実践します。例えば、悪いショットが重なったり、期待値以下のゲーム展開の場合は、大抵フラストレーションが出てきます。良いショットが続き、期待どおりのゲーム展開の場合は、幸福感や達成感が生まれ、気持ちが緩みやすくなります。
さらに、簡単にできるマインドテストを説明しましょう。
【マインドテスト】
- 悪い結果の連続
あなたは、悪い結果が続いた場合に感情が否定的になりますか?
あなたは、悪い結果が続いた場合に感情が攻撃的になりますか?
あなたは、悪い結果が続いた場合に感情が通常の状態でいられますか?
⇒感情と結果を分離
感情と結果を切り離すことにより、取るべき正しい行為を継続して遵守することができます。結果が感情に与える影響を最小限にするため、違うことを頭に描くこと。たとえば、池の波紋や木々の葉の揺らぎ、ゴルフを始めたころの遠い記憶、これにより感情のリセットを行ない、行為を正常に保つ事ができます。 - 良い結果の連続
あなたは、良い結果が連続して決まった場合、満たされた感覚になりますか?
あなたは、良い結果が連続して決まった場合、さらに多くを望みますか?
あなたは、良い結果が連続して決まった場合、当初のままでいられますか?
⇒感情と結果を分離
良い結果さえも、忘れることが大切です。正しい行為を重ねた先にある一時的なスコア。勃興が世の常であるように、スコアの上下は避けられません。唯一、ルーティーンや戦略に変化を与えないことです。とかく、良いゲームのときに作戦を変えたがり、悪いゲームのときに変えたがらないのが人の性です。 - 外的攻撃に対する防御機能
あなたは、たくさんの不満や辛辣な言葉を浴びせられた場合、感情は否定的になりますか?
あなたは、たくさんの不満や辛辣な言葉を浴びせられた場合、攻撃的になりますか?
あなたは、たくさんの不満や辛辣な言葉を浴びせられた場合、顔色一つ変えないでいられますか?
⇒ 誰でも、身を守る反射的な本能が備わっています。しかし、これらを上手く利用して狡猾に仕掛けてくる場合や様々な状況に耐えられるメンタリティーを身に付ける術を知らなければなりません。私なら、「逆境こそ、自分の力が試されている最高の舞台。平然としてやり過ごすか、時におどけて見せる」くらいの気構えで臨みます。 - 自分のミスに対する反応
あなたは、絶好のチャンスを逸した場合、(感情は)自分自身を責めてしまいますか?
あなたは、絶好のチャンスを逸した場合、(感情は)どんどん沈んでしまいますか?
あなたは、絶好のチャンスを逸した場合、平常心を保ち、次のチャンスにプレーンな気持ちで臨めますか?
⇒ チャンスを大切に願う、渇望、切望、懇願する人ほど、逸した場合の落胆は計り知れません。対策法の一つとして、チャンスとの想いを捨て、過ぎた結果、得られなかった機会と、やりすぎる事です。名プレーヤーほど、この行為が上手く、気分の切り替えを大切にしています。 - 他人の結果に対する反応
あなたは、ライバルのスコアが落ちた場合、感情は幸福感で満たされますか?
あなたは、ライバルのスコアが伸びた場合、感情は焦りを覚えますか?
あなたは、ライバルのスコアの結果を気にも留めず、目的を完遂するために、自己の世界に深く潜っていられますか?
⇒ 状況に応じてライバルを強く意識することはあるでしょう。しかし、最終的には自分で最高のプレーをしなければ勝つことはとはできません。自分と向き合い、感覚を研ぎすませ、細胞の一つ一つが機能して最高のパフォーマンス状態に入ることを目指していきます。
勝ちたい気持ちの強い者は、多くの準備を行います。
多くの準備を行う者は、良い成績を求めます。なんとしてでも手に入れたい最高の成績(優勝)が身近にあればあるほど、焦りや落胆、油断が生まれると言えます。
「一度水に潜ったら、相手が水面に顔を出すまでは、息を吸うことを忘れてしまう」といった状況に普段から取り組んでいきたいと思います。
読者の皆さん、今回の内容はいかがでしたでしょうか?
次回もゴルフ上達の秘訣をサラッと伝えていきたいと思います。
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◆小暮博則(こぐれ・ひろのり)
1972年11月27日生まれ。埼玉県出身。明治大学商学部商学科卒業。JGTO(日本ゴルフツアー機構)プロ。PGAティーチングプロ。2003年 JGTO ファイナルQT進出。2013年から東京慈恵会医科大学ゴルフ部コーチに就任している。就任後、同大学は2013年度全日本医科大学ゴルフ連盟秋季大会個人優勝、2014年度全日本医科大学ゴルフ連盟春季大会団体優勝を果たす。PFGA(パーフェクトゴルフアカデミー)のゴルフスクールを主宰し、赤坂(東京都)と小手指(埼玉県)にて展開している。 著書に『一生ブレないスイング理論 “左重心スイング理論”でゴルフの常識が変わる』(カンゼン)がある。
PFGA(パーフェクトゴルフアカデミー)ゴルフスクール
http://pfga.co.jp/