男子プロゴルフの片山晋呉(43)=イーグルポイントGC=が3日、ゴルフが112年ぶりに正式競技に復活したリオデジャネイロ五輪へ向け、羽田空港から出発した。前日の2日午前5時に千葉県内の自宅で抜き打ちのドーピング検査を受け、早くも五輪の洗礼を浴びたことを告白。陸上の棒高跳びの国体選手で、五輪出場を夢見て97年に亡くなった父・太平さん(享年53)の思いも受け継ぎ、日本人ゴルファー初となる五輪メダル獲得を目指すことを誓って夢舞台へと飛び立った。
海外メジャーなどで国際経験豊富なベテランも、未知なる“五輪仕様”に驚きの声をあげた。1日夜、親交のある女子プロゴルファー・笠りつ子(28)=京セラ=ら関係者が壮行会を開いてくれた。「うれしかったですね」と午前3時半頃まで楽しい酒を飲み、千葉県内の自宅へと帰宅。ほろ酔い状態で床に就くと午前5時ちょうどに突然、玄関の呼び鈴が鳴った。玄関前には日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の関係者が立っていた。
日本ツアー会場ではラウンド後に受けることはあるが「いやぁ~驚いた。自宅は初めて。ほんとに5時、5時ですよ。さすがに何事か、と」と厳格な五輪基準に苦笑い。尿検査は無事に済んだが「高いアルコールの数値が出ているでしょうね」と出発前の羽田空港で語り、約30人の報道陣の爆笑を誘った。
7月の五輪代表に決定後、茨城・結城市内で墓参り。父の墓前で手を合わせて報告した。父は1964年東京五輪で聖火ランナーを務めた。今年6月、当時の委嘱状が見つかり「父が行けとゴーサインをくれた」と片山は治安やジカ熱の恐怖を振り払って五輪出場を決めた。幼少時には父と五輪をテレビ観戦。「父が棒高跳びをやっていて、(88年ソウル五輪金メダルの)ブブカがすごく印象に残っていますね。リオでも陸上は見たい。ボルトのサインが欲しいです」と笑った。
5日の開会式にも参加する。五輪コースは「まだ写真で見ただけ」と公式練習で入念な確認を行う予定。「精いっぱい自分のゴルフをして、何色でもいいからメダルをかけて帰ってきたい」。濃紺にストライプ柄のジャケットという、1日に届いた日本選手団の公式服に身を包み、日本ツアー通算29勝、5度の賞金王を誇る43歳は目を輝かせて夢舞台へと旅立った。(榎本 友一)
◆リオ五輪のゴルフ コースは新設されたレセルバ・マラペンディGC(男子7133ヤード、女子6314ヤード、パー71)。英国の「聖地」セントアンドリュースをモデルにしたフラットな海沿いのリンクスで強風が吹く。フェアウェーは高麗芝。男女各60選手が出場、72ホールのストロークプレーで個人戦のみ(男子は11~14日、女子は17~20日)。男子は池田勇太(30)と片山。女子は野村敏京(23)、大山志保(39)が日本代表として出場する。