永井花奈、4年後咲き誇れる日をユメ見る19歳


インタビューに応える永井花奈

インタビューに応える永井花奈

 ラーメン店の元看板娘が、ゴルフ界の看板プレーヤーへと駆け上がる。女子プロゴルフの永井花奈(19)=フリー=は7月29日のプロテストをトップで合格し、以降14試合のツアー出場権を獲得した。東京・大井町でラーメン店「のりや食堂」を経営していたコーチの父・利明さん(49)の指導のもと、プロでの一歩を踏み出したばかりの“ヒロイン候補”は、日本人2人目(史上4人目)の「トップ合格年でのシード権獲得」を夢見ている。

 7月末に日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会員になったばかりのプロ1年生。小動物系の愛くるしい笑顔とは裏腹に、胸の奥には熱いハートを秘めている。

 「『プロになったんだなぁ』という感じはするけど、稼ぐゴルファーになりたいので、まず最低条件としてプロとして試合に出られることがうれしい。そこでどんどん上位で活躍できるプロゴルファーになりたいから、今はすごく頑張る時なのかなと。プロになった分、稼ぐというのが大事。プロでやっていく気持ちはある」

 優勝なら1年後のその大会までの出場権、賞金ランク50位以内なら来季のシード権を得られる。昨年の例で50位は賞金約1800万円。現在205万999円で104位の永井は、残り9試合で高いハードルに挑む。プロテストのトップ合格者が翌年のシード権を獲得したのは、98年の韓熈円(ハン・ヒーウォン、韓国)、01年のウェイ・ユンジェ(台湾)、07年の服部真夕のみ。いずれも賞金ランク50位以内に入り、権利を得た。

 「本当にすごいと思います。難しいことだけど、それにチャレンジできる位置にあるのはすごいやりがいがあるというか、うれしいなと思う。やっぱり目標ではありますね。少しでも多く予選を通って、チャンスがあればつかめるといいなと思う。本当に試合に出られればうれしい」

 安定したショットを含め、苦手な部分がないところが持ち味だ。コーチは父・利明さんだが、あえて専属キャディーをつけず、ハウスキャディーで臨んでいる。

 「自分の力をもっともっと上げていきたい。確かにキャディーさんと相談した方がよくなることがあるけど、今は自分を持って、自分の力を強くしたいというのがある。なので、頼らずにいろいろ自分で考えながらやっています」

 利明さんは69で回ったこともある実力者。毎試合、その運転で移動するなどいつも一緒だが、キャディーを務めることはない。そのあたりは、年頃の娘と父親との間に“普通の”関係が見てとれる。

 「父のキャディー? それはないですね(笑い)。コーチでもあるので、試合というよりラウンドレッスンになっちゃう。それは私に合わないかな。やってもらったこともあるけど、あんまりうまくいかなかった。ケンカはしますね。やっぱり。普段もケンカが多いので、ラウンドもそうだとキツい。うまくいかなくて同じことを何度も注意されたり。でも、ストレートに言ってくれるのはいいこと。遠慮されても困りますし」

 14年の国内メジャー・日本女子オープンでは日本人アマ史上最高の3位に入るなど、1学年下の勝みなみ(18)=鹿児島高3年=らと“アマ旋風”の一端を担ってきた。そのおかげもあり、実家で営んでいた「のりや食堂」は大繁盛。とんこつしょうゆをベースとする和歌山系ラーメンの人気店で、今でも繁忙期には母・裕子さんが働き、永井も小学生時代に“看板娘”として手伝いをしていた。

 「ありがたいなと思う。お店がもうかるというよりも、私の好きなラーメンなので、知ってもらえることがうれしいことだなって。(今後も活躍して)知っていただけたら。私は朝の仕込みとかで、ちょこちょこ手伝ってました。ゆで卵をむいたり、お箸、ネギ、ゴマとかを補充したりですね。おすすめは『つけそば(730円)』です。プロになってあまり家にいないので行く機会が少なくなったけど、たまに『食べたいな』ってなりますよ」

 8月から美容製品や栄養補助食品を製造、販売するニュースキンジャパンと1年間のスポンサー契約。乙女にとっても、アスリートにとっても欠かせないアイテムをサポートしてもらう。

 「化粧品、シャンプーとかいろいろありますよ。日焼け止め、サプリメントも使っています。おすすめ? 私的にはオーバードライブという疲労回復のサプリメントがあるんですけど、それは毎試合、ラウンドの前後に飲んでます。朝起きて、足が重いとかはなくなりました。(日焼けは)職業的にしょうがないと思うけど、顔だけは特に気を使っています。日焼け止めを塗るとか、ビタミンCを多く取るとか最低限のことはやってますけど、やっぱり日差しが強すぎるので、焼けちゃいますね。『若いうちからやっといた方がいいよ』って(先輩プロの)みなさんから言われます(笑い)」

 プロは予選落ちしない限り、日曜日まで試合に出て火曜日から練習。基本的に休みは月曜日だけだが、そんな中でも19歳らしくネイルなどのおしゃれには気を配る。

 「(ネイルは)元々、やりたかったんですけど『高校卒業してプロになったらいいよ』って(父に)言われたので、今はできてます。でも、休みが月曜しかなくて時間がないので、美容室とかネイルとか行っているだけでも予定が埋まっちゃいますね。あと、歯の矯正も月に1回行かないといけないんですよ(笑い)」

 東京生まれ、東京育ち。20年東京五輪開催コースの埼玉・霞ケ関CCは、14年日本ジュニア選手権で3位に入った縁のある場所だ。

 「(代表に)選ばれるような選手になれたら。試合というだけで、私は楽しめる方。プレッシャーは感じないので、世界の選手が集まる試合にどんどん出られたら。アメリカのメジャーとかは出たいなと思います。今は試合に出て、やらなきゃいけないことが明確になってきているので、それを私がどんだけちゃんとできるかが大事」

 プロとしての自覚は十分。ゴルフ界の看板を背負う選手になるために、155センチの小さな体には大きな夢が詰まっている。

 「日本が好きなので、日本でまずは(立場を)確立したい。日本で上位にいける選手、勝つことがやっぱり一番の今の目標。勝てるなら何回でも勝ちたいです。どの試合も手を抜いてやろうとは思ったことはない。誰もが見たいと思う、見て盛り上がる選手になりたいですね」(ペン・浜田 洋平、カメラ・宮崎 亮太)

 ◆永井 花奈(ながい・かな)1997年6月16日、東京・品川区生まれ。19歳。6歳からゴルフを始め、東京・日出高1、2年時の2013、14年に関東女子選手権を連覇。14、15年とナショナルチームに選抜され、14年の世界ジュニアで7位に。14年の国内メジャー・日本女子オープンでは日本人アマチュア史上最高の3位。今年7月のプロテストでトップ通過し、meijiカップから14試合のツアー出場権を獲得。ドライバーの平均飛距離は230ヤード。155センチ、55キロ。

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