◆女子プロゴルフツアー NOBUTAマスターズGCレディース最終日(22日、兵庫・マスターズGC=6507ヤード、パー72)
台風21号の接近により男女とも最終日の競技が中止。男子は第2日までの36ホールの成績で競技が成立し、通算9アンダーの単独首位だった時松隆光(24)=筑紫ケ丘GC=が今季初、通算2勝目を飾った。女子は第3日までの54ホールの成績で競技が成立し、通算11アンダーの単独首位だった上田桃子(31)=かんぽ生命=が5か月ぶりの今季2勝目、通算13勝目。1999年の日本ゴルフツアー機構(JGTO)発足以降、男女とも最終日が中止になったのは初めて。
悪天候の空とは対照的に晴れやかな表情だった。戦わずして逃げ切った上田は「やっぱりうれしい。どんな形でも優勝したかった」。中止の一報をクラブハウスで聞き、緊張の糸が切れた。
第3日を単独首位で終えると祝福の嵐だった。天気予報は降水確率100%で最終日は中止が濃厚。他のプロ、夕食に出かけた飲食店、2位の選手のキャディーにまで「おめでとう!」と言われた。「本当に複雑な気持ち。『いやいや、ちょっと待ってくれよ』って。最後まで分からない」。4月のKKT杯バンテリンレディスでは、首位で迎えた最終日の最終18番で追いつかれプレーオフで敗戦。不安を拭い去ろうと、ホテルの部屋でパット練習を続けた。
ソフトバンク・王貞治会長(77)の金言が頭をよぎった。昨年12月に亡くなった元巨人打撃コーチの荒川博氏(享年86)は“一本足打法”の生みの親で、自身の恩師でもある。亡くなる1か月前に「王に会わせてやる」という約束をかなえてくれた。
初対面だった世界の本塁打王へ「私に一言お願いします!」とサイン色紙を差し出すと「度胸」と書いてくれた。「目力がすごい。勝利への執着心を感じた」と自宅に飾った。今大会の会場には偶然にも「気力」と記された王氏のサインが展示されていた。「やっぱり最後はこれ(気力)が大事だよな。腹をくくった」
規定により賞金は75%に減額されたものの、賞金ランクで6位に浮上。10年ぶりの賞金女王には「え、ここから!?」と控えめだが、2位以上に与えられる来春の海外メジャー・ANAインスピレーションの出場権獲得が目標だ。「女子のマスターズ。勝って池に飛び込みたい」。優勝者の恒例行事は憧れ。夢は諦められない。(浜田 洋平)
◆男女ツアーの最終日が同日に中止になった例 99年のJTGO発足以降では初。88年の女子ツアー制施行後では90年9月30日、男子の東海クラシック(三好CC西C)と、隣接する三好CC東Cで行われた女子の東海クラシック雪印レディースの最終日が大雨で中止になったことがある。男子は通算10アンダーでG・マーシュが優勝。女子は鈴木志保美と柴田規久子が通算7アンダーで並び両者優勝。