【諸見里しのぶの目】リンクスの強風に阻まれた渋野日向子の高弾道ショット…2打目以降の対応に課題


渋野日向子

渋野日向子

 ◆AIG全英女子オープン 第2日(21日、英トルーン・ロイヤルトルーンGC、雨、強風)

 日本女子ツアー通算9勝の諸見里しのぶさん(34)=ダイキン工業=が、2009年大会25位の自身の体験なども踏まえ、連覇の懸かった今季初のメジャー、AIG全英女子オープンで予選落ちした渋野日向子(21)=サントリー=のプレーや現状を分析した。元々、高い球を持ち球とし、林間コースだった昨年と違って初のリンクスで強風への対応の難しさ、新型コロナウイルスの影響で実戦が積めなかった点などを指摘。メジャー全制覇を見据えた様々な挑戦で、今後も信念を貫いてほしいと期待した。

 渋野選手は日本や世界中の注目と期待を背負って臨んだ大会でした。予選落ちで自分を責め過ぎないでほしい。2日間ともティーショットはほぼ完璧で、初日の8番のように良いショットもありました。この経験と悔しさをぜひ来年、再来年につなげてほしいです。

 〈1〉ポットバンカー

 海沿いのリンクスはまだ2戦目。初めて経験する難しさがたくさんあったはずです。例えば初日の4番。第2打をポットバンカーに入れてのトリプルボギー。私も経験がありますが、小さくて深いリンクス特有のバンカーは、中に入るとものすごく“圧”がかかるんです。

 〈2〉第2打以降の風の対応

 次に、リンクス特有の海風も非常に難しい。初日の最大瞬間風速18メートルでのプレーは、日本では経験できません。第2日は7番のミスから流れが悪くなってしまった。渋野選手は元々、球が高いので風の影響を受けやすい。湿気を含んでいて重い海沿いの風には流されやすい。第2打以降の強風への対応、傾斜地からの球の操り方は今後の課題になったと思います。

 〈3〉横風の難しさ

 リンクスの風は距離感や方向性をつかむのが難しい。私も向かい風の中、90ヤードを9アイアンで打ちました。どうしても振り抜けずに緩んでショートしてしまった。横風はさらに難しい。第2日のような強風だと、グリーンエッジから10~20ヤードも外して打たなければいけない。自分を信じて打ち切れないと、大きくオーバーしたりショートしたりして精神面にも影響します。

 今大会は通算9オーバーが予選通過ラインでした。世界中の一流選手が集まって2日間を終えてアンダーパーが1人だけ。大会史上でも屈指の難しさです。リンクスでメジャー初挑戦の渋野選手は新型コロナの影響で試合が積めず、調整がすごく難しかったはず。会見でアイアンショットの悩みを口にしたそうですがスイングを変えて、まだ実戦で結果が出ていないので、自信を持ち切れていないのかもしれません。

 今後2か月は初の米国遠征。世界のトップ選手と回ることで新しい発見が出てくると思います。高い球は米国では武器になりますし、試合数をこなせれば感覚も良くなると思います。5大メジャーを取るためにいろいろ変えている最中。目先の結果に一喜一憂せずに自分のゴルフ人生を考えて、ぜひ信念を貫いてほしいです。(女子プロゴルファー)

 ◆日本人3選手が予選突破 予選を通過した日本の3選手には、決勝ラウンド(R)での活躍を期待しています。上田選手は元々低めの強い球を打つのが得意です。10度目の全英でリンクスでの経験値も高くて、この難条件下でもさすがですよね。畑岡選手はすごく良いショットを打っていました。予選通過ライン上で迎えた第2Rの最終18番でグリーン奥から、左下がりの難しいアプローチをしっかり寄せてパーセーブ。メンタルの強さがあるので期待しています。野村選手はジュニアの頃からパワーヒッターでいろいろな球を操れる。残り2日間で3打差は大きなチャンス。とても楽しみです。

 ◆諸見里 しのぶ(もろみざと・しのぶ)1986年7月16日、沖縄・名護市生まれ。34歳。9歳からゴルフを始める。おかやま山陽高卒業。2005年にプロ転向。ツアー通算9勝。07年日本女子オープン、09年ワールドレディスサロンパスカップ、日本女子プロ選手権とメジャー3勝。年間6勝した09年に賞金ランク2位。160センチ、58キロ。

 ◆リンクスコース 海沿いに位置し、自然の地形を生かしたコース。英国のコースは目まぐるしく天候が変わり、湿った海風や強い雨に耐えなければならない。ラフには芝以外の自然植物が生い茂り、フェアウェー周辺やグリーン周りには底の深いポットバンカーが多い。日本ではあまり見られない。全英女子は、21年はカーヌスティ、22年はミュアフィールドと、ともにスコットランドのリンクスでの開催が決まっている。

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