女子ゴルフ・笹生優花、東京五輪フィリピン代表で金!日本国籍で「世界一」に


自らクラブの調整をする笹生優花(カメラ・清水 武)

自らクラブの調整をする笹生優花(カメラ・清水 武)

 新型コロナ禍で開幕が遅れた国内女子ゴルフ界に、すい星のごとく現れた新人・笹生(さそう)優花(19)=ICTSI=がスポーツ報知の単独インタビューに応じた。8月に、10代では宮里藍さん、畑岡奈紗以来3人目の2戦連続優勝を達成。日本人の父とフィリピン人の母を持ち、両国の二重国籍を有する。平均飛距離260ヤードの“女タイガー・ウッズ”は、来夏の東京五輪でフィリピン代表として金メダルを、その後は世界ランキング1位を目標に掲げた。(取材・榎本 友一、岩原 正幸)

 笹生は8月にNEC軽井沢72、ニトリレディスでツアー2連勝。赤黒のウェアと豪快なプレーから“女ウッズ”と呼ばれる。前週までトップ10が6度で約8275万円を獲得し、賞金ランクは堂々の首位。昨年11月から指導するプロ通算113勝の尾崎将司(73)もパワー、素質を「規格外」と絶賛する。

 「褒めてもらうのはうれしいけど、自分ではまだまだ、もっと練習しなきゃと思っている。ジャンボさんはいっぱい会話するのではなく、練習で気づいた点を注意してくださる。『クラブが下から入ってるよ』とか、癖は毎回一緒なので。今年に入り、ジャンボさんの昔のプレーを動画で見た。100勝されたとか記録は知っていたけど、最初は顔も知らなくて。あんなゴルフをしていたら優勝するよなって。スイングもきれいで飛ぶし、パターもアプローチもすごい。勝つしかない」

 自身は13歳頃から元世界ランク1位、ロリー・マキロイ(英国)のスイングを参考にした。175センチと欧米では小柄だが、体の回転でクラブを加速させる世界屈指の飛ばし屋の振り方を動画を見て研究した。

 「ほぼ全部マネしようとやっていた。次の日起きたらマネできているかなって、1年くらいかかった。体力づくりは両足に重りをつけてトレーニングしたりを前からやっていたけど、それ以上に体のケアもしなくてはいけないと思った」

 東京五輪はフィリピン代表で出場を狙う。世界ランクは同国勢最上位の55位で、代表は“当確”。16年リオ五輪で女子ゴルフは116年ぶりに開催。同国では五輪の金メダリストが誕生していない。

 「五輪のゴルフってあまりやっていない中で、この時代に生まれた。まだ先の話だけど、試合が続く中で世界ランクを保たないと。一試合一試合頑張って、マイペースでやりたい。フィリピンはもともと、五輪に出る人が少ない。出られたとしても、なかなかメダルを取るのは難しいと思う。今は出られたら幸せ。楽しんで、五輪の試合を味わってラウンドできたら」

 開催コースの埼玉・霞ケ関CCを今年すでに2度ラウンド。“予行演習”も行っている。

 「春先と10月に回った。2回とも天気が悪い日で18ホール回れたけど、大変だった。距離もしっかりあってティーショットを打つ場所にバンカーがあったり、フェアウェーが狭くなったり難しい。コースを見てイメージはつかめた」

 東京五輪後、将来は日本国籍取得の意向を持つ。「世界一」の目標を掲げ、世界ランク1位を達成すれば日本勢としては10年の宮里藍さん以来だ。

 「宮里さんが引退された2017年のサントリーレディスでローアマ(38位)を取って思い出に残っている。世界ランク1位の時は、テレビで見て『ユウカも藍さんみたいになりたい』と言った。宮里さん、石川遼さんを見て、実際に紙に絵を描いた。メジャーは勝ちたい。それ以上に世界ランク1位になりたい。なれるかどうか分からないけど、なれるように頑張りたい」

 ◆キャディーと会話するためタイ語マスター

 笹生は本気でプロを目指すと決めた8歳から、父・正和さんの指導でバネのある力強い体をつくるため、連日午前5時半に起床し、登校前に45分間トレーニングを行った。「終わらないとボールを打てないから、たまにズルしたり(笑い)」と、つらさは見せない。師匠・尾崎将司の話題になると「体が大きいからジャンボさんなんですよね」と“見たまま”を得意げに明かして周囲を和ます。「コロナで試合のない期間、(練習場に)1人か2人しかいない中、練習させていただいた」と感謝も忘れない。

 ジュニア時代から16か国を回り、どんなコースにも対応できる上、外国語も流ちょう。「キャディーさんと会話するため、ゴルフに必要だからタイ語も覚えた」とさらりと言った。スポーツ新聞にインタビューが掲載されるのは今回が初めて。ゴルフが好きで、うまくなりたい―。シンプルな考え方が活躍を支えていると感じた。(ゴルフ担当・岩原 正幸)

 ◆笹生 優花(さそう・ゆうか)2001年6月20日、フィリピン生まれ。19歳。5歳から4年間、日本で暮らし、8歳でフィリピンに戻りゴルフを始める。18年アジア大会は同国代表で金メダル。19年オーガスタ女子アマ3位。東京・代々木高3年時、昨秋のプロテストに合格。ドライバーの平均飛距離は260ヤード。日本語、英語、タガログ語が堪能で韓国語、タイ語も少し話せる。家族は両親と妹1人、弟3人。166センチ、63キロ。

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