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2番、ティーショットを放つ堀川未来夢
◆男子プロゴルフツアー 最終戦メジャー 日本シリーズJTカップ 第2日(4日、東京・東京よみうりCC=7023ヤード、パー70=報知新聞社主催)
プロの回復力はすごい。初日5オーバーの75を叩き最下位の堀川未来夢が一転、66で16位へ急上昇だ。昨年のメジャー、日本ツアー選手権森ビル杯でプロ初優勝の27歳。残る36ホールを頑張れば優勝の目もある。「さすがだね」と話を聞くと「それがですねえ、イップスになっちゃいました」と言われてびっくりだ。
「実は」と明かした。「昨日(の大叩き)はカラーからも含めて3パットが5回。1メートル前後のショートパットをことごとく外した。去年の終盤くらいから症状が出ていた。特に上りのパットが全くダメ」と青い顔。だが、この日、その恐怖に耐えながら何とか乗り切っての復活劇。少し落ち着いたのだろう。悩みを打ち明けたのだった。
イップス病。グリーン上のショートゲーム、主にショートパットを決めなければならない時に起こるゴルフ特有の悪性の病気である。この病にかかるとショートパットが届かなかったり、打ちすぎて5、6メートルも行ってしまったりするからたまらない。頭を抱えて「うめく」ので英語の「Yips(イップス)」。この病で引退した英国の名手、トミー・アーマーの造語だ。彼の著書「ABCゴルフ」によると、かのハリー・バードン、球聖ボビー・ジョーンズもこの病のため引退に追い込まれた、とある。
堀川である。まだ28歳、イップスになるほどのキャリアを踏んでいない。前夜、宮里優作に電話をすると「息を静かに吐きながら打て」。片山晋呉には「パターの動きを追うから目が泳ぐ。球を打つことに集中しろ」。イップスを乗り越えた経験を持つ小田孔明は「パターのヒール目(体に近い部分)に構えて打つといい」と言った。「全てスタート前に練習場で試した。結論としては打ちすぎない、をモットーに3パットもボギーもなしで何とか乗り切ったが、不安は変わらずある」
最下位からの優勝なんて無理だ? 1963年の第1回大会、石井朝夫は初日に80を叩きながら2日目は68で2位、3日目には2打差をつけてトップに立ち逃げ切り優勝した。それも2位に8打差のぶっちぎりだ。ゴルフは何が起こるかわからない。頂点目指してやってごらん、イップスなんか飛んで行ってしまうぜ。(ゴルフジャーナリスト)