◆女子プロゴルフツアー 明治安田生命レディス最終日(14日、高知・土佐CC=6228ヤード、パー72)
3打差の首位から出た稲見萌寧(21)=都築電気=が通算6アンダーで並んだ永井花奈(23)=デンソー=とのプレーオフ(PO)を3ホール目で制し、今季2勝目となる通算3勝目を飾った。強風の中、1バーディー、5ボギーの76とスコアを落としながらも、自らをゴルフの世界に導いてくれた亡き祖父・昭さん(享年69)から授かった「忍耐」で乗り切り、涙を流した。世界ランク63位の日本勢5番手から逆転で東京五輪代表選出を目指す。
苦しい状況にも稲見は座右の銘である「忍耐」で勝利をたぐり寄せた。PO3ホール目、永井がパーを逃した直後、1・5メートルのパーパットを冷静に沈めて右拳を揺らした。「苦しいことがたくさんあって(涙が)こみ上げて出た。負けてもおかしくない状態だったけど粘れた」と胸を張った。
3打差で出たが、序盤で3ボギー。「風のジャッジが全て逆にはまった」。最大の危機は10番だった。第1打が右の崖下へ。「頭の中が真っ白。パニックになった」。隣の15番のラフまで落ち、2打目をそのまま前方に打った。崖下からさらに2打で10番に戻し、5オン1パットのボギーでしのいだ。「疲労度は2ラウンド分。ダボとかトリならくじけてた。まだ頑張れると言い聞かせた」と振り返った。
14番のボギーで永井、森田、林の3人に並ばれたが、一度も首位を譲らなかった。「結果はよかったけど、しんどかった一日。ぎりぎりの戦いで勝つのが私っぽい」と安どした。最後は「今週、練習ラウンドで一緒に回った」2歳上で同じ東京出身の永井を退けた。
18年10月、9歳でゴルフを始めるきっかけを作ってくれたという祖父が病気で他界した。「亡くなる前にかけてくれた言葉が『忍耐』。つらいことも我慢して努力して取り組めという意味だと思う。近くで見ていてほしいな」と涙ながらに語り、3年連続のツアー優勝で成長した姿を示した。
21年初戦の前に掲げた目標は「複数優勝と五輪出場」。1年延期された今夏の東京五輪にも「出場できるところまで持っていきたい」と意欲を見せた。6月28日の代表決定までに「3勝くらいは必要。(国内)メジャーとあと1つ勝ちたい」。99年度生まれ「はざま世代」のエースは力を込めた。(岩原 正幸)
◆稲見萌寧(いなみ・もね)プロフィル
▽生まれ、サイズ 1999年7月29日、東京・豊島区生まれ。21歳。166センチ、62キロ。家族は両親。
▽ゴルフ歴 9歳から始める。18年のプロテストに一発合格。19年7月のセンチュリー21レディスでツアー史上15人目となる10代で初優勝。昨年10月のスタンレーレディスで2勝目。
▽学校 日本ウェルネススポーツ大に在学中。
▽ショットメーカー 19年はパーオン率78・2079%で歴代1位。
▽オフトレ キックボクシングを初導入し、瞬発力アップ。10~15ヤードの飛距離アップを目指し、一日4食で5キロの体重増。「会う人に『太ももが大きくなったね』と言われる。私には褒め言葉です」
◆稲見の優勝用具 ▽1W=キャロウェイ・マーベリック・サブゼロ(ロフト角10.5度、硬さS)▽3、5W=スリクソンZX▽4、5UT=ブリヂストン ツアーB JGR▽5I~9I、PW=テーラーメイドP770▽52、58度ウェッジ=タイトリスト・ボーケイSM8▽パター=テーラーメイド・トラス TB1▽ボール=ブリヂストン ツアーB XS
◆女子ゴルフの東京五輪への道 今年6月28日時点の世界ランクを基準に算定する五輪ポイント上位60人が出場権を得る。〈1〉15位以内は各国・地域で最大4人〈2〉16位以下は〈1〉の有資格者を含めて最大2人が出られる。同8月4日から4日間、埼玉・霞ケ関CC東Cで72ホールストロークプレーの個人戦で競う。2016年リオ五輪で初出場した日本女子は野村敏京が4位、大山志保が42位だった。