◆女子プロゴルフツアーヤマハレディース葛城第2日(2日、静岡・葛城GC山名C=6564ヤード、パー72)
40組117選手が出場し、20組ずつが午前組、午後組に分かれてプレー。午前組の最終組がホールアウトした。
首位スタートの山下美夢有(19)=加賀電子=が4バーディー、1ボギーの69で回り、通算9アンダーとして首位に立った。
午後スタートの小祝さくら(22)=ニトリ=は7ホールを消化、高橋彩華(22)=東芝=は9ホールを消化し、それぞれ通算7アンダーの2位につけている。
ツアー参戦1シーズン目の19歳、山下が強風が吹く難コースで耐えた。「番手選びが難しかった。アプローチとパットでしのぎました」と69のスコアを充実の表情で振り返った。
10番からスタートし、折り返しの18番パー5。残り83ヤードの第3打を52度のウェッジでピン奥12メートルまでオーバー。3パットでボギーをたたいた。「アゲンスト(向かい風)と思ったら、違った」。しかし、続く1番パー4で残り146ヤードの第2打を8アイアンでピン手前3・5メートルにつけると、微妙な距離をねじ込んでバーディーを奪い返した。通算9アンダーとしてホールアウトした時点で単独首位に立った。
2019年11月にプロテスト合格。コロナ禍の影響で統合された2020―21年シーズンに初参戦している。昨年8月、元々は軍事用に開発された弾道追尾システムを活用した弾道計測器の「トラックマン」を購入した。「約300万円でした。一番、高い買い物でした」と山下は話す。距離、ヘッドスピード、スピン量など正確な数値を計測できる最先端機機器のトラックマン。国内外のトッププロは持っている選手が多いが、山下は昨年8月に購入した時点ではデビューから3試合連続で予選落ちしており、生涯獲得賞金は0円。自らの将来を信じ、思い切った先行投資だった。
「番手の間の距離を合わせるため、グリップ位置やハーフショットで対応できるようになり、ゴルフがレベルアップしました」ときっぱり話す。トラックマンを活用した練習を始めると成績は急上昇。昨年9月のゴルフ5レディスで初めて予選を通過し、19位。その後も3試合でトップ10に入り、今季ここまでの獲得賞金は1396万6914円(ランク47位)。すでに先行投資した300万円を回収した。
賞金総額1億円、優勝1800万円の今大会で、さらにリターンを目指す。「今年は1勝を目指しています。今大会は、まだ36ホールあります。1打1打集中し、チャンスがくれば取りたい」ときっぱり話した。
今年1月、日本男子ツアー通算48勝の中嶋常幸(66)が主宰する合宿に参加。「プレッシャーは必ずある。それを楽しむことが大事だ」“レジェンド”から金言を授かった。「去年までプレッシャーに負けることがありましたが、今は楽しめるようになりました」と山下は胸を張る。
同期の笹生優花(19)=ICTSI=は海外メジャーのANAインスピレーション第1日に首位と3打差の8位と好発進した。「結果は確認しますけど、まずは自分ですね」と冷静に話す。
身長150センチ。水を入れた約20キロのポリタンクで筋力トレーニングに励み、体重は日本女子プロゴルフ協会ホームページに記載されている公称52キロから増量。「今、57キロですね。3食、しっかり食べています」と屈託なく笑う。
高額なトラックマンと安価なポリタンク。両方を活用し、急成長中だ。山下美夢有、19歳。その名の通り、美しい夢が有る。