◆日本男子プロゴルフツアー 中日クラウンズ 第1日(30日、愛知県名古屋GC和合=6557ヤード、パー70)
初出場のアマチュア・笠原瑛(19)=中部学院大2年=が6バーディー、2ボギーの4アンダー、66で回り、首位と2打差の4位と好発進した。国内では珍しい左打ちで、1991年3月の羽川豊以来の日本人レフティーVを狙う。73年のツアー制施行後、初の21世紀生まれ&5人目のアマ優勝も目指す。ツアー通算3勝の金谷拓実(22)=フリー=が、6アンダーの単独首位。今大会は悪天候などの影響で4月29日の競技が中止となったため、54ホールに短縮された。
ツアー屈指の歴史を誇る伝統の大会で、無名の左打ち大学生アマが快進撃を演じた。笠原はショット、パットともにさえ渡った。4番で1メートルにつけてバーディー先行すると、9番は3メートルを決めて伸ばした。11番は30センチ、12番で2メートル、14番と18番は4メートルを沈めてリーダーズボードを駆け上がった。ホールアウト後、大勢の報道陣の前で「ちょっと出来すぎかなと思った。同じ組の小木曽さん、竹内さんがすごく優しくて、楽しく回れたのが要因です」と謙遜し、はにかんだ。
今大会は3月の中部アマプロ選手権アマの部を制して出場権を獲得した。ツアーは17年8月以来、2戦目。前回は「緊張して全然ダメ」で予選落ち。その反省をもとに気心の知れた弟・慶太さん(17)をキャディーに起用。ラウンド中も和やかに会話して「いつも通りできました」と感謝した。
日本ゴルフ界では珍しいレフティー。普段は右利きだが「ゴルフと野球だけ左打ち」だ。趣味でゴルフをたしなむ父・宏さん(48)から「利き手の右手で引っ張れるように」と勧められ、幼少時から打ち込んできた。「左打ち用のクラブがない」「練習場では右端で打たないといけない」など悩みはあるが、今大会に向けた練習ラウンドでは「(感覚的に)左打ちは回りやすい」とコースとの好相性を感じ取っていた。
163センチと小柄ながらマスターズ王者バッバ・ワトソン(米国)を参考にした平均300ヤードを超える「飛距離とショット力」が武器だ。首位と2打差の4位発進に「予選通過が目標だったんですけど、いけるところまで頑張ってみたい」と19年11月の金谷以来、5人目のアマVも視界に入れた。左打ちのアマVなら国内男女ツアー初、21世紀生まれは男子ツアー初となる。「広島にはツアーがないので。ツアーの予選会に出ながらできる」と、岐阜の大学に進んだプロ志望の19歳が歴史を塗り替える。(榎本 友一)
◆笠原 瑛(かさはら・あきら)2001年6月27日、広島・安芸郡熊野町生まれ。19歳。姉の影響で5歳からゴルフを始め、16年中国ジュニア選手権男子12~14歳の部で優勝。広島・瀬戸内高卒、中部学院大2年。得意クラブはドライバーで平均飛距離は300ヤード。163センチ、72キロ。AB型。家族は両親と姉、弟。
◆21世紀生まれV 国内女子ツアーでは、01年生まれの笹生優花(19)が昨年8月のNEC軽井沢72で初の21世紀生まれ優勝を成し遂げた。今年4月、同じく01年生まれの山下美夢有(みゆう、19)もKKT杯バンテリンレディスで初優勝を飾った。
◆主な左打ちプロゴルファー ▼国内男子ツアー 羽川以外に、2015年のメジャー、日本プロ選手権でアダム・ブランド(豪州)が優勝。18年のレオパレス21ミャンマー・オープンでポール・ピーターソン(米国)が優勝した。▼米男子ツアー 03年にマイク・ウィアー(カナダ)がメジャーのマスターズを左打ち選手で初制覇。フィル・ミケルソン(米国)は04、06、10年とマスターズを3度制して05年全米プロ選手権、13年の全英オープンでも優勝した。12年、14年のマスターズを制したバッバ・ワトソン(米国)らもいる。