◆東京五輪 男子ゴルフ 第3日(31日、埼玉・霞ケ関CC=7447ヤード、パー71)
前日から持ち越された第2ラウンド(R)に続いて第3Rが行われ、マスターズ覇者の松山英樹(29)=LEXUS=は第3Rで5バーディー、1ボギーの67と伸ばし、通算13アンダーで首位と1打差の2位につけた。日本ゴルフ界初の金メダルへ、マスターズで最終日最終組を競った首位のザンダー・シャウフェレ(米国)を追う。星野陸也(25)=フリー=は1アンダー46位。
打った直後に確信した。松山はボールがカップに入る前から、右手の拳を握った。18番、金メダルにつながる1メートル半のパーパットを沈めた。「なかなか頭はついてきていない。それでも明日はすごく楽しみな一日になると思うし、自分の持てるものを全部出し切りたい」。7月初めに新型コロナに感染した。病み上がりの体で気力を振り絞り、1打差で最終日を迎える。
強い日差しと湿度が体力を奪い、集中力をそいだ。3つ伸ばして12アンダー首位で折り返した後半は、表情に疲労の色がにじみ出た。氷のうを首に当て、15番では第2打地点に向かって歩きながら、ペットボトルの水を頭から思い切りかぶった。「暑いのは皆一緒。体力的にまだ戻りきっていないので、しんどい部分はあったが、そんなのは言い訳。しっかりと良い位置で終わろうと思って最後までやり切った」と言い切った。
17番はグリーン手前のバンカーから、強烈なバックスピンをかけて30ヤード先のピン脇にぴたりとつけた。高い技術で後半初めてのバーディーを奪った。多くのボランティアが松山の組について回り、道路沿いの14、15番ではフェンスの外から「松山がんばれ!」の声援が飛んだ。「無観客ではない感じではできている。違和感はあるけど、うれしいなとは思う」。自国開催を味方につけている。
コロナ感染後は10日間ゴルフができず、実戦は1か月ぶり。24日にコース入りした後も調子は思うように上がらなかった。だからといって諦めるような男ではない。日本代表の丸山茂樹ヘッドコーチは「入ってきた時の状態を考えると、この位置で戦ってくれていることはすごいこと。責任感というか、情熱というか。全部背負ってやっている」と感嘆しきりだった。
メジャー大会では毎試合のように日本の期待を背負ってきた。「五輪は3位までに入ると銅メダルだけど、メジャーは優勝しか評価されない。どういうモチベーションで明日やっているかわからないけど、しっかりと金メダルを目指したい」。ホールアウト後、時折笑みを交えながら1時間の最終調整を済ませた。どんな時も最善を尽くし、マスターズ王者にまで上り詰めた日本のエースが、残り18ホールを戦い抜く。(高木 恵)