松山英樹コロナ病み上がりも自国開催「最初で最後」全て振り絞った…担当記者が見た


10番、ティーショットを放つ松山英樹

10番、ティーショットを放つ松山英樹

◆東京五輪 男子ゴルフ 最終日(1日、埼玉・霞ケ関CC=7447ヤード、パー71)

 最終ラウンド(R)が行われ、初出場でマスターズ覇者の松山英樹(29)=LEXUS=は1打差2位で出て5バーディー、3ボギーの69で回り、通算15アンダーで日本五輪男子最高の4位に終わった。7人による銅メダルを懸けたプレーオフ(PO)に回ったが、1ホール目でパーをセーブできずに脱落した。単独首位スタートで67で回った、世界ランク5位のザンダー・シャウフェレ(27)=米国=が18アンダーで逃げ切って金メダルを獲得した。

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 期待されたメダルには惜しくも届かなかった。それでも、4日間の松山の熱闘には、それ以上の輝きが凝縮されていたと思う。日本代表の丸山HCによれば7月初めのコロナ感染の後遺症で、帰国後も頭痛があったという。五輪を欠場して米国に残り、来週以降の米ツアーに備える楽な選択肢もある中、松山はあえて過酷な挑戦を決断。「欠場」の2文字だけは周囲に一度も口にしなかった。

 16年リオ五輪ゴルフは日本ではそれほど注目されなかった。日本ゴルフ界初のメダル獲得となればワイドショーも含めて大々的に報じられ、子供などファン以外の人にゴルフを知ってもらう絶好機となる。「日本でやる五輪に出られることは最初で最後」。4月に日本男子初のメジャー制覇を遂げたマスターズ王者は、病み上がりながら期待と重圧を一身に受け止め、限られた時間の中で懸命に調整。国内のコロナ感染拡大が収まらない中で「たくさんの方々にゴルフの素晴らしさを知ってほしい」と責任感を燃やして酷暑にも負けず、持てる力の全てを振り絞った。

 華やかな開会式には出ずに静養を優先。会場入り後は小技の練習に多くの時間を割いた。世界屈指の精度を誇るショットを完調に戻すのは短時間では難しい。伸ばし合いの展開の中、小技でスコアを作って最終日最終組で堂々の優勝争い。リオ五輪よりもはるかに多くの日本人の目をゴルフへと向けさせた。

 世界初のグリーンジャケット(マスターズ王者の証し)と五輪メダルのダブル獲得はお預けとなった。それでもコロナを克服し、五輪メダルに迫ったその雄姿は日本中に勇気を届けた。(ゴルフ担当・榎本 友一)

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