初アマ2勝&95年ぶりメジャー制覇の蝉川泰果 1歳の時、アンパンマンのプラスチック製クラブが原点


95年ぶりにアマチュアでメジャー制覇を達成した蝉川泰果(カメラ・馬場 秀則)

95年ぶりにアマチュアでメジャー制覇を達成した蝉川泰果(カメラ・馬場 秀則)

◆男子プロゴルフツアー メジャー第3戦 日本オープン 最終日(23日、兵庫・三甲GCジャパンC=7178ヤード、パー70)

 6打差首位から出たアマチュアの蝉川泰果(たいが、東北福祉大4年)が2バーディー、2ボギー、1トリプルボギーの73で回り通算10アンダーで、初日から首位を譲らない完全優勝を達成した。9月のパナソニックオープンに続く、史上初のアマ2勝目、アマのメジャー優勝は第1回・1927年大会の赤星六郎以来95年ぶり2人目の快挙となった。

 蝉川は初日にアマ大会最少ストロークの64で滑り出すと、第2日は70。前日の第3Rは自身の記録を1打更新する63をマークした。

 ゴルフ人生は1歳から。アンパンマンのプラスチック製クラブから始まった。最初はつかまり立ちのつえ。転がし出した球が、数か月後には“強打”になった。破損し泣きじゃくる息子に、父・佳明さんは何度も買い直しに走ったという。

 高校生の時、大学に行くかプロになるか、進路に迷った。「プロとして4年間生活した方が自分にとっていいのかなと悩んでいた」。だが、今大会も優勝を争った比嘉一貴や金谷拓実といった東北福祉大の先輩たちを見て「ああいった(実力のある)方たちでもプロのフィールドに行ったらなかなか勝てない。自分自身も1回しか予選通過がなかった」と、18歳で即プロ入りはまだ厳しいとの判断から、松山英樹らを輩出した強豪の同大学へ進学を決めた。

 当初は「おこがましいけど、大学2年までにツアー優勝できたらいいと考えていた」。それでも予選通過すら厳しかった。4年となった今年の目標は「QTでトップ通過すること」だった。6月に下部ツアーで優勝すると得意のドライバーショットに自信を深め、9月のレギュラーツアー優勝で「仕事場が決まったというのが一番大きい」と安どした。

 日本ゴルフ協会のナショナルチームに所属し、「(ヘッドコーチの)ジョーンズさん、ショートゲームのテクニカルコーチのビショップさん、メンタル面の菅生先生、いろいろな分野の専門家の方のアドバイスのおかげ。関西オープン(4月、2日目首位で17位)から優勝争いできたり、合宿で伸びた部分はすごくある」と感謝した。

 

 ◆蝉川 泰果(せみかわ・たいが)2001年1月11日、兵庫・加東市生まれ。21歳。名前の由来はタイガー・ウッズで父・佳明さんが名付けた。1歳からプラスチック製クラブでゴルフを始め、兵庫教育大付中から大阪・興国高を経て東北福祉大に進学。高校2年時に関西ジュニア選手権、高校3年時に国体優勝。22年度のナショナルチーム選出。6月に下部ツアーで優勝し、今夏の世界アマで個人戦2位。9月にツアー優勝。ドライバーの平均飛距離は300ヤード超。175センチ、77キロ。

 ◆達成した記録 

 ▼21歳265日の優勝は大会史上4番目(日本人で1928年浅見緑蔵=19歳280日に次ぐ2番目)の若さ。

 ◆第1回日本オープン 1927年5月、神奈川・程ケ谷CC(6170ヤード、パー70)で行われた。2日間72ホールで争い、アマ12人、プロ5人の17人が出場。赤星六郎(1898年―1944年)が通算309で2位・浅見緑蔵に10打差をつけて優勝。他に日本アマで1勝。赤星は米国留学中にゴルフを覚え、帰国後は日本ゴルフ界の発展に尽力した。今年は第87回大会。

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